神戸・5人殺傷事件 控訴審も無罪 “心神喪失”と判断 遺族落胆「2度殺されたようなもの」大阪高裁 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

神戸・5人殺傷事件 控訴審も無罪 “心神喪失”と判断 遺族落胆「2度殺されたようなもの」大阪高裁

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 神戸市北区で2017年7月、祖父母や近隣住民ら5人を殺傷したとして殺人や殺人未遂などの罪に問われ、一審・神戸地裁で無罪とされた無職の男性(32)の控訴審判決公判が25日、大阪高裁で開かれ、検察側の控訴を棄却した。

 大阪高裁は「男性が妄想の影響下で心神喪失状態だった疑いが残る」と判断し、刑事責任能力を否定した。

 5月の控訴審初公判、7月の第2回公判に続いて、この日も男性は出廷しなかった。

 検察側は「善悪の判断が著しく低下していたが、一定程度残っている『心神耗弱状態』だった」と主張。一方弁護側は、「犯行時の男性は、完全に妄想に支配されていた」と反論し、一審判決の精神疾患の評価(心神喪失)は適正とし、改めて無罪を主張。「責任能力はなく、心神喪失である」として控訴棄却を求めていた。

大阪高裁

 検察側は一審で、男性が専門学校に通学していた際、同級生の女性のものとみられるインターネットへの投稿を解析し、自分へ好意を寄せたメッセージと受け止め「自分と、この女性以外は人間ではなく、これらを倒さなければ、女性と結婚できない」という妄想を抱いて犯行を決意したと指摘。精神鑑定の見解も分かれており、控訴審の証人尋問では、鑑定医の1人は「圧倒的な妄想の支配下にあった」、もう1人は「妄想の影響は限定的だった」と述べ、判断が分かれていた。

 判決で大阪高裁は、「一審で、男性は被害者らを人間ではない(男性は「哲学的ゾンビ」と称していた)と確信しており、人を殺害している認識はなかったと認定していた点は相当であると」して、「妄想を確信していた疑いが払拭できない」と指摘。一審判決に誤りはないと結論付けた。

 刑事責任能力については刑法39条で、心神喪失状態での行為は罰しないとし、心神耗弱の場合は刑を減軽すると定められている。

 遺族の1人は「控訴審での(無罪)判決は、私たちの心をもう一度殺すに等しい」とコメントした。そして、2人の専門家の意見が分かれて、被告に有利な意見が採用されたことに疑問を呈した。

 男性は2017年7月16日、同居する祖父母(いずれも当時・83)や、近くに住む女性(当時79)を包丁で刺すなどして殺害、母親(59)や近所の別の女性(71)にも負傷させたとして起訴された。

 一審・神戸地裁判決(2021年11月4日)は、男性が精神疾患(統合失調症)により善悪を全く判断できない『心神喪失状態』だった疑いがあると判断した。

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