携帯電話がないことから「毎週木曜日にここで会いましょう」という約束で2人は付き合い始めます。連絡先の交換をせず少しずつ恋愛感情を深める男女を描く、映画『アナログ』が全国公開中です。
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主人公は、新築ビルやレストランの設計を手がける会社のデザイナー・悟。悟は目立つタイプではありませんが、手描きのイラストや模型を作ってデザインを具体的に伝えようとする丁寧な仕事ぶりが顧客から評価され、会社の後輩から慕われています。
悟はある日、自分がデザインしたカフェ「ピアノ」を訪れました。ちょうど、女性がひとりレジで会計を済ませるところです。女性は、この店を気に入っていると言い、店の奥の窓枠やトイレのペーパーホルダーのデザインが素敵だと悟に話しました。悟はこの女性と初対面でしたが、目立たないけれど自分が工夫を凝らした細かいポイントを褒めてくれたのをとてもうれしく感じます。
別の日。悟がピアノでコーヒーを飲んでいると、あの女性がやってきました。悟は思い切って食事に誘います。2人はジャーマンポテトが美味しい店を訪れ、会話が弾みました。女性はみゆきという名前で、携帯電話を持っていないことが分かりました。その日の別れ際、悟がみゆきに尋ねます。
「会えたりできますか、また」
「何もなければ、来週も同じくらいの時間にあのお店にいます」
2人は、毎週木曜日の夕方にカフェ・ピアノで会う約束を交わします。
悟は、みゆきと会って時間を重ねるうちに彼女のことをどんどん好きになっていきます。みゆきの髪型はショートカットで、いつもきれいな服を着ていますが、自らのことをあまり語らず、表情は悲しみを抱えているようにも見えます。悟にとってみゆきは謎めいていて、素性が分かりません。
こうした中、みゆきがクラシック音楽を好きというのが分かり、悟が演奏会のチケットを用意して誘いました。オーケストラの演奏が始まると、みゆきはどういうわけか感極まったような表情で席を立ち、足早に会場を出ていきました。
