「西の比叡山」と称される書写山円教寺(天台宗別格本山 兵庫県姫路市書写)で18日、一千年以上続く「修正会(しゅしょうえ)・鬼追い会式」が営まれた。
円教寺の修正会は、開山した平安中期の高僧・性空上人(しょうくう 910年~1007年)の入滅後間もなく始められたとされる。鬼追いは、かつて夜通し行われていたことから、本殿・摩尼殿(まにでん)の扉が完全に閉じられた暗闇で、ろうそくと松明の炎だけを頼りに書写山の鎮守、「若天(わかてん)」「乙天(おとてん)」と呼ばれる赤鬼と青鬼(護法童子)の舞が続く。
赤鬼・青鬼の役は、書写山の麓に住む梅津家が担っている。
性空上人の出自は京都の橘氏とされ、早くから山岳仏教を背景とする聖(ひじり)として、多くの霊験があったという。このうち、青鬼は不動明王の化身で、悪霊を追い払う宝剣を握る。赤鬼は毘沙門天の化身で、槌を背負い、右手で鈴を鳴らし左手で松明を振りかざして火の粉を散らして四股を踏み、大地を浄めて五穀豊穣を祈る。いずれの鬼も性空上人に仕えたと伝わるが、これらの鬼には角がない。
円教寺では2021~2023年にかけて新型コロナウイルスの感染拡大防止対策を施し、「密」にならない空間を確保するため、修正会の際、本来ならば閉じたままの摩尼殿の扉をすべて開放していた。
今年(2024年)は4年ぶりに本来の形に戻し、「暗闇」を再現した。
毎年、修正会に訪れる兵庫県太子町の50代の女性は、「やはり、堂内が真っ暗だからこそ、鬼たちが四股を踏む力強さと、松明の炎の迫力を感じることができる。今年は元日の能登半島地震、17日に29年を迎えた阪神・淡路大震災、そして東日本大震災は、間もなく13年経つ。亡くなられた方々のご冥福と、早期復興を祈った」と話した。