劇作家・演出家 平田オリザさんのラジオ番組(ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』)に、香美町香住区鎧地区の前自治会長・藤原政信さんが電話出演。この時期恒例となっている、“海をおよぐこいのぼり”について語った。
日本海に面した兵庫県香美町香住区鎧地区は、人口約150人52世帯の集落。山に囲まれた入り江は、古くから天然の良港として知られている。
“海を泳ぐこいのぼり”は、まちの過疎化が進むなか、地区の子どもたちを楽しませるために村の有志がはじめたもの。開始から35年が経ち、いまでは、ゴールデンウィークの風物詩となっている。
JR山陰本線鎧駅を降り、眼下に広がるエメラルドグリーンの海をゆらゆらと泳ぐカラフルなこいのぼりを見ようと、カメラを手にした観光客も訪れるように。当初は各家庭から集められたこいのぼりを使用していたが、現在は全国各地から寄せられ、今年も色鮮やかなこいのぼりが100匹近く集まっている。
設置作業は体力勝負。約200メートルあるワイヤーにこいのぼりをつないでいき、湾を囲む山の中腹(標高約25メートル)あたりから降ろしていく。湾に吹き込む北風が強い日には、こいのぼりの頭が切れてしまうこともあるそうだ。
「山に近い部分には、短いこいのぼり。中ほどには大きいもの……と、並べ方にもコツがいるんです。急傾斜の山に90匹のこいのぼりを持って上がって、重りをつけて一気におろす。これが壮観なんですよ。ただ、山から降ろすときは風が強いと飛ばされてしまうので、期間中も天候次第ですね。高所作業は慣れているので大丈夫(笑)」(藤原さん)
高所作業もお手のものな藤原さんも、今年で76歳。この春、7年務めた自治会長の任期を終え、69歳の新自治会長にバトンタッチしたところだ。昔は村の人々も自主的に作業に参加していたが、メンバーの高齢化に伴い、どのように継承していくかが現在の課題となっている。
藤原さんの言葉を受け、平田さんも「浜上町長(香美町)とも先日、いろいろお話をさせていただきました。お盆や麒麟獅子舞(きりんじしまい)など、お祭りも盛んな地域です。(若者に)戻ってきてもらえるといいのですが。高所作業は、(平田さんが学長を務める)芸術文化観光専門職大学でもお手伝いできれば」とコメントした。