岡山県北東部の鳥取県との県境にある自然豊かな町、奈義町。同町にある奈義町現代美術館で「太田三郎展:OTA SABURO1994-2024」が6月16日まで開催中だ。この美術館の北側にはシンボルでもある那岐山がそびえ、その裾野に町が広がっている。美術館の設計者である建築家・磯崎新さん(昨年12月に没)は、那岐山を見てこの麓に自然と一体となった美術館をつくりたいと言ったそうだ。
太田三郎さんは津山市在住の美術家。同展は「時間」と「場所」の関係性をテーマに制作された“自然と一体となった作品”が展示されている。太田さんは東京から津山に移住して今年で30年、その歩みはこの奈義町現代美術館の開館30年とも重なっている。また、岡山県北エリアでこの秋に開催される「森の芸術祭」との連携企画でもある。
今回は植物のみを使った大規模な展覧会だ。太田さんが10年間かけて毎日採集した植物の種をディスプレイした作品や、実が特徴的な植物・数珠玉を200メートルつなげた作品など私たちの身近にあるものを使い膨大な時間をかけて制作された作品だという。
奈義町現代美術館の遠山さんは「社会問題を想起させる意味合いを含んでいるものもあり、考えさせられます」と話す。さらに「太田さんの作品は誰もが手に入れることができる素材を使って作品に仕上げているのですが『ただ集める』という行為自体10年も続けると、それは膨大な“時間”が凝縮された作品になるのです。先日来館した子ども絵画教室の生徒さんたちは自分が生まれた日の種を探し、その種を見ながら家族と思い出話をしていました。太田さんの日常と鑑賞者の特別な日が重なり、それが作品鑑賞体験となるのです」と語っていた。
※ラジオ関西「金曜Clip」 2024年5月10日放送回「岡山県北 美の国Clip」より
◾︎太田三郎展:OTA SABURO1994-2024公式ホームページ