時代に応じて多様に変化 優品で歴史たどる展覧会 兵庫陶芸美術館「丹波焼の世界season8」 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

時代に応じて多様に変化 優品で歴史たどる展覧会 兵庫陶芸美術館「丹波焼の世界season8」

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 素朴で味わい深い魅力を持つやきもの「丹波焼」。兵庫陶芸美術館(丹波篠山市)では、丹波焼を特集した展覧会を継続して開いている。今回の「リモート・ミュージアム・トーク」は、現在開催中のテーマ展「丹波焼の世界season8」について、同館学芸員の萩原英子さんに解説してもらう。

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 兵庫陶芸美術館では、2024年12月8日(日)まで、テーマ展「丹波焼の世界season8」を開催しています。日本六古窯の一つに数えられる丹波焼(丹波篠山市など)は、平安時代末期に常滑焼(愛知県)など東海地方の窯業技術を取り入れて誕生しました。本展は、丹波焼の優品からその歴史をたどります。

兵庫陶芸美術館

 丹波焼は、中世には、壺(つぼ)・甕(かめ)・摺鉢(すりばち)を中心に、灰白色の素地に鮮緑色の自然釉の美しい無釉陶器の生産に終始しますが、近世初頭には窖窯(あながま)から登窯(のぼりがま)に転換し、趣向を凝らした茶陶とともに、葉茶を入れる耳付きの壺や朝倉山椒の名を記した壺なども生産するようになります。ほぼ軌を一にして、器面に塗った土部が赤く発色した赤土部、灰釉や栗皮釉、石黒釉など各種の釉薬を生み出し、それらを縦横に駆使し、器面装飾に多彩な展開をみせました。

 さらに、近世後期には、白い器面の瀟洒(しょうしゃ)な白丹波とともに、京焼系の意匠・技法を受容し、時代の求めに応じて変化しながら、現在まで作り続けられてきました。近年には、丹波焼の伝統を活かしつつ、斬新で新たな息吹に溢れた作品も制作されています。

気に入った作品を間近でじっくり鑑賞できる

 本展では、「田中寛コレクション」(2018年3月、兵庫県重要有形文化財指定)を中心に、800年を超える歴史を育み、日本六古窯の一つとして日本遺産にも認定された(2017年4月)丹波焼の名品や現代に活躍した丹波の作家の作品を通して丹波焼の未来を探ります。また、特設コーナーで「葉茶壺(はちゃつぼ)」を紹介します。

 朝倉山椒壺は、朝倉山椒を保存・運搬する専用の容器として、17世紀半ばから後半までのごく僅かな期間に生産されました。胴部を輪積みによって筒状に成形した後、内面に布を巻いた板を押し当て、さらに外面を板で叩いて六角形に仕上げています。胴部中央に「朝倉山桝」の印銘が捺され、この部分に窯の燃料の薪の灰が降りかからないように火裏に向けて焼成しています。

丹波 「灰釉朝倉山椒壺」(かいゆうあさくらさんしょうつぼ) 江戸時代前期(17世紀) 兵庫陶芸美術館(田中寬コレクション)兵庫県指定重要有形文化財

 葉茶壺は、もとは中国南部などで作られた「唐物」の壺を日本で茶の葉を入れる容器として転用したものです。室町時代後期に「茶の湯」が流行すると、葉茶壺の需要が拡大し、瀬戸(愛知県)や備前(岡山県)、信楽(滋賀県)に加え、丹波でも唐物茶壺を模した葉茶壺が作られました。頸部付け根に沈線を巡らせ、片部に付く四つの耳と耳の間の一箇所に小判形の印を二つ押しています。器体全面に施された灰釉は焼成によって変化し、まだらの文様が生じています。

丹波 「灰釉四耳壺」(かいゆうしじこ) 江戸時代前期(17世紀) 兵庫陶芸美術館(田中寬コレクション)兵庫県指定重要有形文化財

 特設コーナーでは、赤土部や灰釉で彩られた作品を紹介しています。多彩な装飾を施した丹波の葉茶壺をお楽しみください。

(兵庫陶芸美術館 学芸員・萩原英子)

◆テーマ展「丹波焼の世界season8」◆
会場:兵庫陶芸美術館(〒669-2135 兵庫県丹波篠山市今田町上立杭4)
会期:2024年3月9日(土)~12月8日(日)
休館日:月曜(月曜が祝休日の場合は翌平日)
開館時間:10:00~17:00(入館は閉館の30分前まで)
観覧料:同時開催中の特別展の料金に含まれます。
(特別展開催期間中はテーマ展のみの料金でご覧いただくことはできません)
問い合わせ先:電話079-597-3961

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