陶磁器の優品を数多く残した名工、初代和田桐山(1887~1967年)の作品を集めた特別展「初代和田桐山―兵庫が生んだ名工―」が兵庫陶芸美術館(兵庫県丹波篠山市)で開かれている。専門家が分かりやすく解説する「リモート・ミュージアム・トーク」のこのたびの担当は、同館学芸員の村上ふみさん。3回にわたって、作品の見どころなどについて教えてもらう。最終回は「初代桐山の精華、赤地金襴手(あかじきんらんで)」。
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兵庫陶芸美術館では、2024年8月25日(日)まで、特別展「初代和田桐山―兵庫が生んだ名工―」を開催しています。大正から昭和にかけて兵庫県尼崎市で活躍した初代和田桐山。赤地金襴手を始め、白磁、染付、色絵など多種の技術に優れました。本展ではこれまでまとまって取り上げられる機会が少なかった初代桐山の作品が一堂に会します。
初代和田桐山は特に赤地金襴手においてその才能を発揮しました。《赤地金襴手龍文輪花皿》は、深みのある色調の赤絵の具にやや艶を抑えた重厚感のある金彩を合わせることで、美しい器面を作り上げています。赤地に金をむらなく塗り込めた後、先端の尖った鉄筆で金を掻き取り、下地の赤を精緻な線描で浮かび上がらせた絢爛(けんらん)豪華な赤地金襴手は、まさに初代桐山の精華です。
《赤地金襴手龍鳳凰文輪花皿》は、青銅鏡を思わせる八稜形。縁の部分に厚く施された金彩が光り輝き、見込み(中央部)の染付龍文とのコントラストにより、さらにきらびやかに浮かび上がっています。10枚の組み皿です。
《赤地金襴手鶴文蓋物》は鶴の意匠がメインの蓋物で、細やかに描かれた地文様も見どころです。
《赤地金襴手龍文茶巾筒》と《赤地金襴手宝相華鳳凰文茶巾筒》はいずれも、高さ10センチにも満たない小さな器ですが、それぞれ精緻な絵付けが施されており、初代桐山の高い技術力を垣間見ることができます。