中国を代表する博物館の1つ「上海博物館」と東洋陶磁の世界的な殿堂「大阪市立東洋陶磁美術館」(大阪市北区)が持つ極上の名品を一挙公開する特別展「中国陶磁・至宝の競艶―上海博物館✕大阪市立東洋陶磁美術館」が同美術館で開かれている。上海博物館から、中国の国宝級に相当する「国家一級文物」を含む計50件の逸品が来阪、中国陶磁の美の真髄を味わえるまたとない機会となっている。2025年3月30日(日)まで。
大阪市と上海市は友好都市で、2024年は提携50周年に当たる。同展は、友好の節目を記念して開催された。唐時代~清時代のラインアップで、上海美術館出品の50件のうち、国家一級文物は10件、日本初公開品は22件(うち海外初公開19件)。一方、東洋陶磁美術館からも国宝・重要文化財を含む27件が披露され、会場では中国陶磁の美の“競艶”が展開している。
とりわけ注目は、国家一級文物が集中する展示室1だ。大壺『青花雲龍文壺(せいかうんりゅうもんつぼ)』は明時代・正統年間(1436~1449年)の景徳鎮官窯を代表する現存最大の完全形の作品。重さ約120キロで、上海博物館に収蔵されて以降、これまで外に出たことはなかった。胴部に龍と火焔宝珠がダイナミックに描画されている。
制作中の偶然による“奇跡”の1点も。清時代・康熙年間(1662~1722年)に景徳鎮官窯で作られた印肉容器『蘋果緑釉印盒(ひんかりょくゆういんごう)』(国家一級文物)には、希少な紅色の「豇豆紅(こうとうこう)釉」が用いられたが、窯で焼かれる過程で「蘋果緑」と呼ばれる淡い“青りんごの緑色”に変化。一部紅色の箇所と美しいコントラストを成し、唯一無二の神秘的な輝きを放つ。同作も、海外で公開されるのは初めてだ。
一方、東洋陶磁美術館からは明時代・洪武年間(1368~1398年)の『青花雲龍文梅瓶(せいかうんりゅうもんめいぴん)[春壽(しゅんじゅ)銘]』を紹介。洪武朝の宮廷用磁器で、特別な献上の酒を貯蔵したとみられる。上海博物館所蔵の同名作品と並べて展示、時を経ての“再会”を果たしている。