田中酒造場(姫路市広畑区本町 田中康博・6代目当主)で11月26日、伝統の「石掛式天秤(てんびん)搾り」が始まった。播磨に新酒仕込みの季節が訪れた。

田中酒造場は「温故創新」をモットーに、1835年(天保6年)から180年以上、姫路の地で酒造りを続けている。 有名な純米大吟醸「白鷺の城」は1988年(昭和63年)に全国新酒鑑評会で初めて金賞を受賞して以来のロングセラー。


フランス・パリで開催される日本酒コンクール「KURA MASTER」では、純米酒部門で「Chateau SHIRASAGI 65(名刀正宗 乙天)」、純米大吟醸部門で「亀の甲 四拾七」、生酛部門で「生酛純米吟醸 白鷺の城」は、金賞の常連となっている。
江戸時代から続く天秤搾りは、まず、サクラの木でできた酒槽(さかぶね)の中に、布袋に重ね入れた”醪(もろみ)”を入れ、盤木と呼ばれる重石を置いていく。
そして約5メートルのケヤキの棒の端につるされた石で搾り出す。「てこの原理」が生きている。


もろみの圧搾方法では最古とされ、田中酒造場では1960年代までは行われていたが、オートメーション化が進み、いつしか酒槽や天秤はお蔵入りに。
しかし「石掛式天秤搾りの技術を後世に伝えたい」という田中当主の強い思いで、2000年に復活させた。


酒槽は 、高さ80センチ、幅70センチ、奥行き1.3メートルの大きさ。もろみは兵庫県産の米で仕込むが、田中智久専務によると「今年(2024年)も猛暑で比較的雨量が少なく、米が硬めになったため、すっきりした酸味のあと、しっかりうま味が出てくるよう工夫した」という。