近年、様々なメディアでお笑いの賞レースが放送され盛り上がっているなか、上方落語の定席の一つ「神戸新開地・喜楽館」(神戸市兵庫区)でも12月15日(日)、上方落語の次世代スターを選ぶコンテスト「神戸新開地・喜楽館AWARD2024」決勝が実施される。
東京では“若手真打”と呼ばれる入門16~25年目までの上方落語家を対象に、観客ら聴衆が審査して頂点を決めるこのコンテスト。「充実している年代から、若い落語家さんのリーダー的な存在を募って実施することで、ゆくゆくは神戸、関西、さらには日本の落語を引っ張ってくださる方をお客様の投票で決めようという大会」と話すのは、同施設支配人の伊藤史隆さんだ。
コンテストが始まった背景には、上方落語会に東京のような昇進制度がないことが挙げられる。東京では入門ののち“見習い”に始まって“前座”、“二ツ目”と位が上がり、 入門から15年ほど経ったところで最上級の技量を持つとされる“真打ち”に昇進するが、上方落語界にはそうした制度が存在しない。そこで、一定のキャリアを重ねた上方の噺(はなし)家が現在の立ち位置を自覚し、後進を率いる意識につなげるものとして喜楽館AWARD2024が生まれた。
実は伊藤さん自身も、神戸大学時代に落語研究会に所属して落語を演じていた。その後、1985年に大阪の朝日放送へ入社してアナウンサーとして活躍。定年を迎えた昨年(2023年)喜楽館から誘われ、支配人への就任を同年4月に発表。見習いとして業務に従事したのち、開館5周年を迎えた同年7月に正式就任した。
2018年に待望の寄席として誕生した喜楽館だったが、翌19年からのコロナ禍では半年ほど閉じざるを得ず、客足が遠のくなど苦労が続いていた。「冗談みたいな話ですが、コロナが一番厳しいときには、お客様に『声を出して笑ってくれるな』と言ってたらしいんですよ」と伊藤さんは明かした。
そんな苦難を超えた喜楽館も、今ではすっかり笑い声が戻ってきた。喜楽館AWARDは今年が2回目。初代栄冠を手にしたのは桂雀太さんだった。今回の決勝は12月15日(日)に実施される。
決勝に先駆けて、9日(月)からの1週間は「神戸新開地・喜楽館AWARD2024決勝ウィーク」と題し、決勝出場者の桂ちょうばさん、林家染吉さん、桂佐ん吉さん、笑福亭鉄瓶さんに加え、2位の中で得票率トップだった桂三四郎さんを中心にした番組での落語会が開催される。