1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災では、兵庫県立美術館の前身である兵庫県立近代美術館も大きな被害を受けた。あれから30年。県立近代美術館は、2002年に兵庫県立美術館と名称を変えて、HAT神戸に開館した。文化の復興のシンボルとして様々な事業を行っている。現在開催中のコレクション展では、震災をテーマにした作品や、約半世紀にわたり収集した近現代美術のコレクションを紹介する。
阪神・淡路大震災では、当時、原田の森(現在、原田の森ギャラリーと横尾忠則現代美術館が建つ)の兵庫県立近代美術館も大きな被害を受けた。建物だけではなく展示中の作品が落下したり、倒れたり、破損したり……58点が展示されていたが、30点が落下し、22点が損傷した。被害はブロンズ製の彫刻作品に多く、台座と作品が固定されていなかったことや、台座に耐震構造がなかったことなどが原因のひとつとされている。現在は作品を台座に固定することは当たり前となっている。
今展の彫刻の展示室には、当時何らかの被害を受け、修復された作品と、修復の過程を紹介するパネルが並ぶ。大理石で制作された北村正信の『春の作 1930年』『つぼみ』など、よく見ると修復の跡がわかる作品もある。
この他会場には、震災以降に収蔵された、震災の記憶を呼び起こさせる作品、支援のために寄せられた作品、記憶をとどめる表象となる作品も並ぶ。福田美蘭の『淡路島北淡町のハクモクレン』は、倒壊した家屋の写真と絵を組み合わせた作品。「この木を残してほしい」というメモがつけられた木の写真に、「接ぎ木」したように絵が描かれており、願いと希望を作品の中で叶えようとしたとされる。この木は今も残っているそうだ。また震災当時の様子を描いた作品や、長田区で焼け残った「神戸の壁」をこすり出して和紙にとどめたマーテンス・トンの『長田区の壁(紙のモニュメント)』、美術品のレスキュー第1号となった中山岩太の『神戸風景(夜)』なども。飯尾由貴子学芸員によると「95年は美術品レスキュー元年とされる」という。
前身の兵庫県立近代美術館の開館から2025年で55年。この半世紀の間に収集してきた近現代美術のコレクションを「近代の光-黎明期の洋画と版画」「海辺の光景-阪神間モダニズムと1930年代の油彩画」など6つの視点から紹介し、小磯良平の収集第1号となった作品や金山平三の収集の軌跡についても振り返る。