人手不足が課題とされた農業ですが、ここ最近ではそれに加えて、不作のための商品価格高騰も大きくクローズアップされています。その原因となっているのが、気候変動の影響。記録的な大雨や夏の気温上昇などにより、作物に直接的なダメージが及んでいるとともに、雑草や害虫の増加も懸念されます。
そのなかで、環境問題や食品ロス対策に力を入れている企業が、ビニールハウスでのいちご栽培で新たな取り組みに着手しています。
廃食油再生処理事業を展開している浜田化学株式会社(本社:兵庫県尼崎市)が、淡路島・洲本市の廃校を利用して栽培しているのは、白いちご「淡雪」。この品種は、真っ白ではなく淡いピンク色で、香りや糖度も一般的ないちごに比べて高いのが特徴だそう。
そのいちご栽培を担当するのが、同社新入社員の高原杏実さん(※「高」=はしごだか)。大学生の頃にICTを活用したいちご栽培と、いちごのうどんこ病について研究した経験もある若きホープに、最近の気候変動による作物への影響について聞きました。

「ボイラーを使用することでビニールハウス内を温めることはできますが、外気以上に冷やすことができないので、昨年の暑さによる病気や害虫の影響を大きく受け、苗作りに苦戦しました。また、日中に陽がさすと、ビニールハウス内では30℃以上になることもあれば、夜間や早朝は約2℃まで下がるため、ビニールハウス内で気温を一定に保つことも大変です」(高原さん)

高原さんによると、いちご栽培におけるビニールハウス内の適温は26℃ほど。ICTを活用できれば、温度を感知し、屋根や窓を開けたりして、温度を一定に保てるそうですが、ほとんどのビニールハウス栽培ではまだICTの導入が進んでおらず、手動で確認しなければならないのが現実。気候変動による影響は無視できない、喫緊の問題となっています。
そのため、同社では、本業の廃食油回収からリサイクルしてできたバイオマス燃料を、ビニールハウス内の温度を保つための灯油ボイラーに混合する作業を実施。現在も実験段階中で、今後はその混合比率を上げていくとのこと。バイオマス燃料に置き換えることで、二酸化炭素の排出を抑える低炭素型農業の実現を目指せるといいます。

「昨年の8月はビニールハウス内が50℃になることもありました。温度を下げる方法について、実際に状況を見ていただいた上で地域の方々にたくさんのアドバイスもいただきました」と、高原さん。
「肥料については有機肥料を使用し、化学肥料の蓄積による生態系の破壊や、環境汚染を少しでも軽減できる方法で取り組んでいます。地域の方々をはじめ、農業全体で知恵を共有しあって、環境問題を乗り越えられるような仕組みづくりを今後も目指していきたい」と笑顔で話していました。
農業分野での気候変動対策への取り組みで、ICTの発展とともに、現場の若き担い手の活躍に、今後も期待が高まります。
※ラジオ関西『正木明の地球にいいこと』より





