地域で暮らす住民の相談役として、高齢者の見守りや子育て世代の支援などを行う、「民生委員・児童委員」。高齢化や単身世帯の増加が進む近年も、地域のつながりを支える存在として活動を続けています。現場でどのような取り組みが行われているのか、神戸市の現状について、担当者に話を聞きました。
民生委員・児童委員の制度は、1917(大正6)年に岡山県で始まった「済世顧問制度」を前身とし、2017(平成29)年には創設から100年を迎えました。厚生労働大臣から委嘱を受けた無報酬のボランティアが、それぞれ担当する区域で暮らしにまつわる相談に応じ、必要に応じて行政の窓口や福祉サービスにつなぐ役割を担っています。また、児童委員は、民生委員が兼ねることになっていて、子どもや子育て家庭の相談にも対応しています。

神戸市内では現在、およそ2400人の民生委員・児童委員が活動しています。
その1人で、神戸市民生委員児童委員協議会の理事長・坂本津留代さんは、阪神・淡路大震災をきっかけに活動を始めました。当時、仮設住宅に暮らす高齢者や被災者を支えるボランティアを経験し、その後、民生委員に推薦されたといいます。
坂本さんが今も忘れられないと振り返るのは、震災復興住宅に移った高齢者から早朝に届いた1本の電話です。
「80年生きてきて、人の声が聞きたい、寂しいって思ったのは初めて。こんな朝早くにごめんね」
この言葉に胸を打たれ、すぐにその高齢者のもとを訪ねて声をかけたといいます。
「慌ててそのお宅に飛んで行って、『引っ越しおめでとう』と声をかけたんですが、やっぱり人間って、ひとりじゃダメなんだなと。声をかけるということがこんなに大切なことなんだなと、その方に教えていただきました」
高齢者の見守りや子育て世代の相談だけでなく、地域の実情に合わせたさまざまな福祉活動も行っている民生委員。
18歳以上75歳未満が条件となっていますが、担い手の高齢化が進み、活動の負担が偏るケースも。担い手の確保と活動の継続的な支援が求められています。

神戸市では、そんな民生委員の活動を補助する「民生委員支援員」という独自の制度も導入。見守り活動や地域福祉の現場を支える支援員は年齢制限がなく、活動の担い手の裾野を広げる目的もあります。
神戸市福祉局くらし支援課の杉山しのぶさんは、「高齢化が進む中で、地域のつながりを支える取り組みの重要性は今後さらに増していく。地域の誰もが安心して暮らせるよう、制度の役割もますます大きくなると考えています」と話します。
「ひとりではできないことも何人か集まれば解決できたり、神戸市や県に思いを届けることができたり、いろんな方法を学びながら一緒に地域を良くして『この地域に住みたい』と思ってもらえるよう、それぞれの地区の民生委員が頑張っている」と、坂本さん。「これからもどうか応援と、それと仲間になっていただければ」と、呼びかけていました。
高齢化や孤立が進む社会のなか、住民同士のつながりを支える「民生委員・児童委員」。これからも地域に欠かせない役割を担っていきそうです。
※ラジオ関西『サンデー神戸』2025年5月11日放送回より
【「民生委員・児童委員」(神戸市公式HPより)】
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