西洋の花や小鳥、リボンに幾何学模様、ゼロ戦まで。神戸ファッション美術館(神戸市東灘区)で開かれている特別展「大正の夢 秘密の銘仙ものがたり」がもうすぐ閉幕する。大正から昭和前期にかけて大流行した着物「銘仙」の多彩なコレクションや関連資料を紹介した貴重な機会で、同館の担当者は「銘仙に込められた遊び心、当時の人々の生きる力を感じてもらえたら」と話す。

銘仙は、経(たて)糸と緯(よこ)糸をずらして織る技法「絣(かすり)」によって生み出される平織りの絹織物。色の境界がにじんだような風合いが特徴だ。色とりどりでかわいらしいデザインが女学生らに受け、大正時代から昭和前期の女性たちのおしゃれアイテムとして人気を集めた。現在もアンティーク着物として多数のファンを持つ。

展覧会は、銘仙コレクター・研究家の桐生正子さんが所有する品の中からえりすぐりの60点を公開。着物スタイリストの大野らふさんがディスプレイに協力した。展示は「ネオクラシック」(日本の伝統柄を鮮やかな色合いで新解釈した古典プラス柄)、「ガーリッシュ」(ロマンチックな西洋風の花や蝶や小鳥たち)、「ジオメトリック」(新しいアートの潮流を汲んだ幾何学模様)、「キッチュ」(時代やブームを柄に読み込んだ楽しい意匠)の4部構成。
「ネオクラシック」では、大きな孔雀羽柄の着物と袴を着用したコーディネートや、当時、海外にも輸出されていた兵庫県豊岡産の大型柳バスケットと大きな睡蓮文様の銘仙との組み合わせなど、“リアルはいからさん”が登場。「ガーリッシュ」には、西洋風の花やキュートな小鳥などがあしらわれた、現在のフェミニン系ファッションに通じるデザインのものが目白押しだ。リンゴの音符に小鳥がちょこんととまっている、かわいさ100%の図案、その横には、洋ナシやバナナなど西洋の果物がシルエットで表されたモダンな逸品が並ぶ。


「ジオメトリック」では若い職業婦人の着用品を紹介。ガーリッシュな銘仙を着ていた少女たちが大人になった時に着る銘仙をつくるのが百貨店の命題で、女性誌で宣伝し、新進アーティストが手掛けた商品などを販売していたという。昭和初期になると幾何学柄が多くなり、前衛的な作品も生み出された。展示では、エチオピアなどアフリカ国旗の鮮やかな色で流水文を描いた着物にエプロンを付けた、当時のファッションリーダーである女給さんのいでたちを再現。






