生まれも育ちも神戸市中央区でサブカル郷土史家の佐々木孝昌(神戸史談会、神戸史学会・会員)が、北区出身で落語家の桂天吾と、神戸のあれこれについてポッドキャストで語る『神戸放談』(ラジオ関西Podcast)連載シリーズ。今回のテーマは「山と夜景」です。
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神戸のイメージは“海の見える港町”。ラジオ関西も「海の見える放送局」をキャッチコピーにしている。しかし、同じぐらい山も見えるのだ。神戸市域に占める山の割合は、4割なのである。
神戸には戦前から、毎朝山に登る「毎日登山」の文化がある。今でも、多くの登山団体が毎日登山を楽しんでいる。僕も、小学校の時は遠足で再度山によく登った。諏訪山児童公園の所から登って論鶴羽堰堤で休憩し、猩猩池を経て修法ケ原まで行くのだ。学校が芦屋だった中高6年間は、学校行事で毎年「六甲登山」があり、芦屋川の高座の滝道から登り、ロックガーデン、風吹岩などを経て六甲山頂の一軒茶屋で休憩。魚屋道を下って有馬温泉まで行くルートだった。我ながら意外に、山に親しんでいるのだ。
そもそも山に囲まれた所で育った北区出身の落語家・桂天吾君にとって、山と言えば「菊水山」とのこと。確かに、鈴蘭台からハイキングコースにちょうどいい。僕も小学校の頃に、遠足で烏原貯水池から菊水山に登ったものだ。天吾君いわく、菊水山からの夜景も綺麗だとか。え、菊水山から夜景なんて見えたっけ? 天吾君は言うのだ、「遠くに見えるんです」と。
神戸は日本三大夜景の1つとして、摩耶山・掬星台からの夜景が有名。その他、六甲山ガーデンテラスやビーナスブリッジなども定番。しかし、神戸では東西に山が連なっているのだから、基本、山からならどこでも夜景は綺麗なのだ。逆に、定番ではない夜景に新鮮さがある。山麓やちょっとした高台からでも、充分綺麗だし。

先日、夜に御影の高台にある甲南医療センターへ行くことがあったのだが、ここからの夜景も美しかった。毎日、この眺めが味わえる付近の住宅がうらやましい。わが家の近くでも、高台にある兵庫区の祇園神社境内からの眺めも良い。よく車で通る鵯越の丸山大橋や長田の西丸山からの眺めも好きなスポットだ。

ちなみに夜景に限って言えば、僕が一番好きなスポットは山からではないが、明石海峡大橋の上り線から見る夜景である。走っている車内からしか見ることはできないが、橋上中央辺りではまるで空を飛んでいるかのような感覚になり、明石から垂水、須磨にかけての夜景が迫ってくるのは絶景だ。

神戸では、1975年から「KOBE六甲全山縦走」が開催されている。また、旧市街には東から保久良山や一王山、布引山、高取山、鉢伏山など気軽に登ることができる背山が各区にある。海と違って、一年中楽しむことができる神戸市民のレクリエーションだ。神戸市は、多くが山に囲まれている北区と西区で市域の7割近くを占める。神鉄には北区に「山の街駅」もある。まさに、神戸は港街ならぬ“山の街“なのだ。
その「山の街駅」から2駅の鈴蘭台出身・天吾君もさぞかし意気揚々かと思いきや、「あえて山に登ろうとは思わないですね。鈴蘭台から下山して来たら、やっぱり神戸は海やなと思う。海ですわ。別に、山に関心無いですね」やって。
(文=サブカル郷土史家 佐々木孝昌)
※ラジオ関西Podcast『神戸放談』#14「神戸は山の街」より





