大阪・関西万博と並行して大阪各地で開催されている現代アートの国際フェスティバル「Study:大阪関西国際芸術祭 2025」が好評だ。「ソーシャルインパクト(社会的影響)」をテーマに、芸術による経済活性化や社会課題の可視化を図る意欲的な取り組みで、各会場はアートファンのみならず、インバウンド(訪日外国人客)や学生らで賑わっている。
万博とほぼ同会期の186日にわたり、万博会場、大阪文化館・天保山、大阪国際会議場、西成・船場エリア、JR大阪駅周辺(いずれも大阪市)のほか、国立民族学博物館(大阪府吹田市)など、大阪を象徴する複数のスポットが舞台に。24カ国・地域から100組以上のアーティストが参加し、都市全体をミュージアムに見立てて展開する。


中でも注目されているのは、大阪文化館・天保山で開かれている、ハイパーリアリズム(超写実主義)の傑作を集めた展覧会「Reshaped Reality:ハイパーリアリズム彫刻の50年」だ。世界的アーティストを含む27組の作家が、人体を題材にした39点の作品を出品。人の一瞬を精緻に捉えた、奇跡のような立体造形を鑑賞できる。

とりわけ目を引くのはアメリカの作家ドゥエイン・ハンソンの『Bodybuilder』(1989-90)だ。筋骨隆々とした体格の若い男性がトレーニングマシンの上に座り、視線を落として疲れた表情を見せている。筋肉の陰影や肌の質感は細部までリアルで、男性のため息が聞こえてきそうな実在感を醸す。
スイスの2人組アーティスト、グレーザー/クンツは、車椅子に乗った石膏の男に映像技術を駆使し、命を吹き込んだ。せわしなく動く眼、感情が表れた表情はきわめて自然で、生きた人間と相対した感覚に陥る。

人体を部分的に拡大した作品も複数登場。日本生まれのカズ・ヒロが手掛けたアンディ・ウォーホルの肖像、北マケドニア出身のジャルコ・バシェスキの『Ordinary Man』(2009-10)などは毛穴や血管まで忠実に再現され、独特の表情によって「内面」をも表出。「人間とは何か」という根源的な問いを見る者に突きつけてくる。





