島根県の東南端に広がる奥出雲町は、中国山地の嶺を境に鳥取県・広島県に隣接した町。ぽっかりと開けた明るい盆地が広がるのどかな山里が、今年「世界農業遺産」に認定され話題になっています。
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世界農業遺産とは、伝統的な農業やそれに結びつく文化・景観・生物多様性を守りながら継承してきた地域を、国連食糧農業機関(FAO)が認める制度。現在、102の地域が認定されており、国内では17の地域が認定されています。このたび同町が評価されたのは、古来の「たたら製鉄」と結びついた独自の農林畜産システムだといいます。
砂鉄を採るために利用された「水」の仕組みを生かし、棚田や水路が造られ、それが稲作へとつながりました。水路は今も地域の農家が協力して維持管理し、田んぼへ水を運びます。かつての使役牛は肉用牛へと姿を変えつつ、堆肥を田に戻し稲わらや畔の草を餌や敷料に。無駄の無い地域資源のリサイクルは過去から現在へと受け継がれ、循環型農業や棚田景観が維持・保全されています。こうした知恵と暮らしが「持続可能な農業」として世界から注目されたのです。
認定の背景には数々の農産品の存在も。ブランド米「仁多米」をはじめ、奥出雲和牛・そば・しいたけなどのきのこ類、さらに地酒・餅・味噌・醤油といった加工品など、地域ならではの味覚が豊富だとか。
「奥出雲たたらと刀剣館」や、たたら経営者であった鉄師の「櫻井家・可部屋集成館」「絲原家・絲原記念館」などたたらの歴史や文化を体感することができる施設には多くの人々が足を運ぶのだそう。
他にも、 温泉宿泊施設のある「亀嵩温泉・玉峰山荘 」や日本 三大美肌の湯 のひとつである「斐乃上温泉」、山の絶景を堪能できるループ橋「奥出雲おろちループ」といったアクティビティスポットも。四季ごとに表情を変える棚田や里山の風景に、カメラを構える観光客も少なくないようです。
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世界農業遺産に認定されたことで、今後さらに取り組みが活性化するであろう同町。「自然」「食」「文化」の共存に興味がある人は訪れてみるといいかもしれません。





