姫路市で2001年に起きた「花田郵便局強盗事件」で、再審請求していたナイジェリア国籍の40代の男性について、神戸地裁が16日までに請求を棄却したことが弁護人への取材でわかった。男性はこの決定を不服として近く大阪高裁に抗告する見込み。
男性は、実刑が確定した親族の男性と共謀して現金約2300万円を強奪したとして2006年に懲役6年が確定。服役後に再審(=やり直しの裁判)請求で、大阪高裁が2016年3月、請求を棄却した神戸地裁姫路支部の決定を取り消して審理を差し戻すとした。これを受け神戸地裁は、改めて再審を行うかどうか審理していた。
再審請求では男性の弁護側が、目出し帽のDNA型が男性と一致せず、真犯人が別にいると主張していた。
警察や検察は毛髪や指紋が男性と一致しない鑑定結果を隠蔽し、郵便局の防犯カメラ映像を改ざんしたなどと訴えたが、神戸地裁は映像の改ざんはなく、提出されたDNA型の鑑定書や復元した防犯カメラの映像は「無罪を言い渡すべき新たな証拠に当たらない」と判断したという。
またこの強盗事件で、男性は証拠が改ざんされたなどとして、国と兵庫県(兵庫県警)に計1億円の損害賠償を求めていたが神戸地裁は16日、時効が成立しているとして違法性を判断せずに訴えを棄却した。
訴状によると、神戸地検姫路支部は当時、犯人が使ったとされる目出し帽のDNA型鑑定の結果を隠して裁判に証拠として提出せず、兵庫県警も犯人特定につながる郵便局内の映像を消去したなどとしていた。
男性は日本人の妻と娘とともに兵庫県内で生活しているが、現在は国外退去命令が出ているという。男性の代理人・池田崇志弁護士は「男性は20代で無実の罪で逮捕、勾留、有罪確定となり、気づけば40代に。こうした違法ともいえる捜査がなければ一番充実した時期を過ごせたはず。日本の刑事司法のあり方にやるせなさを感じている」と述べた。