◆「板宿」や「県庁前」を音にするとこんな感じ?
実際にShirotsubakiさんの曲を聴いてみると、メロディや歌詞のある一般的な曲とは違って、ほとんど自然音に近いような音楽であることが分かる。
興味深いのは、そうした抽象的な音楽が、しばしば具体的な地名と結びついていることだ。例えば、「My Town」というアルバムでは、すべての曲のタイトルに、「Hanakuma」、「Oji-Koen」、「Kenchomae」など、神戸の具体的な地名がつけられている。
「なるべく客観性を重視して主観を排除したいとは思っているんですが、きっかけとしては自分の中に蓄積したものから作るしかないと思っています。例えば、『Itayado』という曲は、高校時代を過ごした板宿の思い出から作りました。思い出のなかのシチュエーションをたどっていったときに、家族や友人たち、パートナーと遊びに行って楽しかったとか、あのときの風が心地よかったとか、五感で感じることのできた場所の心象風景から曲を作り始めることが多いですね。ただ、発表したあとはリスナーが各々自由に解釈して欲しいという思いがあります」
いっけん抽象的な音楽だが、さまざまな記憶で満たされた器のようにしてリスナーの個人的な感覚が呼び覚まされていく。そんな触媒としての働きが、Shirotsubakiさんの楽曲の魅力のひとつではないだろうか。
◆コロナ禍の影響
現在、コロナ禍によって全世界的に文化活動を制限せざるを得ない状況が続いているが、Shirotsubakiさんもその例外ではない。
「海外のレーベルオーナーと話していても、流通が滞っていて工場からCDが届かないとか、なかなか話が進まない状況ではありますね」
以前は月に2回ほどライブパフォーマンスを行っていたが、現在のところ再開の目処は立っていない。先が見えない日々の中で模索を続けている。
「われわれがライブハウスにできることって基本的にはライブをして集客することなので、こういう状況になったらどうすればいいのかと考えています。配信とか投げ銭とか、いろいろ模索中ではあるんですけど……」
Twitter @ynemnynemn
https://twitter.com/ynemnynemn
Bandcamp
https://hshirptsubaki.bandcamp.com/music
アルバム「My Town」
「Itayado」