【高橋】 全く秘密のことなのでわかりませんが。昔から同盟関係があり、親戚関係でもあり、貸しもあるので、援軍を願い出たのでしょう。
【田辺】 黒井城を取り囲んだ明智勢としては、まさか(背中の)多紀郡の八上から自分たちを(波多野が)攻めてくるとは思っていないわけですね。
【高橋】 いえ、要するに巻いているときに、その陣営での裏切りがあったということですね。
【田辺】 波多野もこの黒井城の包囲の中にいたわけですか?
【高橋】 そうです。
【田辺】 呼び込み合戦といいますね。
【高橋】 攻める方に近い者が前衛をたまわるということもあり、波多野秀治は案外、前衛にいた可能性がありますよね。だから連絡は取りやすかったかもしれません。
【田辺】 背中から来て挟み撃ちというよりも、むしろ直接Uターンしたという感じですかね。
【高橋】 (光秀は)背後から襲われたという感じですね。光秀は命からがら、栗柄峠から2キロほどの鼓峠というところをずっと逃げて行くんです。そして、この地で影武者が命を落とすんです。波多野秀治の家臣の細見将監と畑牛之丞が二人で襲ったのですが、影武者となったのは光秀の家臣の堀部兵太夫でした。兵太塚というのが江戸時代はあったそうです。
【田辺】 影武者ではなく、もし明智光秀がここで殺されていたら、本能寺の変もなかったということになるわけですが……。ここで負けた光秀はどこまで逃げて帰るのですか?
高橋成計『明智光秀を破った「丹波の赤鬼」 ~荻野直正と城郭~』(神戸新聞総合出版センター)
定価 本体2,300円+税
発行日 2020年2月
ページ 240ページ
ISBN 978-4-34-301061-2
神戸新聞総合出版センター
https://kobe-yomitai.jp/book/1007/
『ラジオで辿る光秀ゆかりの兵庫丹波』2020年5⽉14⽇放送回音声