「ファッション界で最も聡明な女性」と称されたヴァレリー・スティールが選ぶ『宝』を集めた特別展「Treasures of Fashion -ヴァレリー・スティールの審美眼-」が、神戸市東灘区の神戸ファッション美術館で開催されている。
ヴァレリー・スティールは、ファッションを扱う教育機関として世界的に有名なアメリカ・ニューヨーク州立ファッション工科大学に併設されたミュージアムのディレクター兼チーフキュレーター。今回、ゲストキュレーターとして神戸ファッション美術館が所蔵する作品から150点をセレクト、18世紀のロココから現代までのファッションの魅力を詰め込んだ。
会場に入るとロココの時代のカップルが出迎えてくれる。女性がまとっているのは「ローブ・ア・ラ・フランセーズ」。ワンピースのようだが、下にはパニエ(下着の一種。スカートを美しい形に見せる)とコルセット。そのうえにローブを羽織っている。フリンジなどテキスタイル自体で装飾を施している。この時代の代表的なスタイル。一方、男性は「アビ・ア・ラ・フランセーズ」というスタイル。コート・ジレ・キュロットの3点セット。シンプルに見えるが、生地に刺繍が施され豪華さを演出している。
この「ロココ」のコーナーには、今から300年前の生活がある。正装から少しカジュアルなものまでが集められ、マネキンの髪型もそれに合わせている。女性のスカートが長いため見えないが、布製の靴も履いている。またこの当時のファッションは、現代の日本のロリータファッションにも大きな影響を与えていることがわかる。
時代を経て20世紀、1900年代に。最も有名な女性のひとり、シャネルに焦点を当てる。
シャネルは孤高のデザイナーとして捉えられることが多いが、同じ時代に活躍したヴィオネやスキャパレリと関連づけて紹介する。この頃まで、黒色は喪服を連想させることから女性のファッションに取り入れられることはなかったが、シャネルはエレガンスでシンプルな「リトルブラックドレス」を発表、腰を締め付けず女性が着やすく機能的なデザインを取り入れた。
戦後になると、ディオールやバレンシアガなど男性デザイナーによる、生地をたっぷり使ったゴージャスなオートクチュール(高級注文服)が黄金期を迎える。男性デザイナー優位の中で、シャネルは、シャネルスーツを生み出す。「夜、出かけるために着替えなくてもアレンジOK」のスタイルは新定番となった。
神戸ファッション美術館
https://www.fashionmuseum.or.jp/