安倍晋三首相(65)が28日、辞任する意向を表明した。持病が悪化、新型コロナウイルスの収束や日本経済の立て直しへの対応が迫られるなか、 首相の職務を継続するのは困難と判断、退陣を決めた。
これを受け自民党は総裁選挙について、9月8日に告示、14日に投票と開票を行う日程で最終調整に入った。その後17日に臨時国会を召集して、首相指名選挙を経て新政権が発足する見通し。「安倍1強」を誇った最長政権は2012年12月の第2次内閣発足から約7年8か月で幕を閉じる。
街で安倍政権の実績を聞くと、「トランプ米大統領との関係」「アベノミクス」が多く挙がった。
安倍首相はオバマ・トランプ両大統領との信頼関係を深め、日米同盟を強化。政権は安保法制を整備し、集団的自衛権の行使にも道を開いた。ロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席らとのトップ外交を推進し、「外交の強さ」を売りにした。しかし北方領土問題や北朝鮮による日本人拉致問題など、解決できていないものも多く、パフォーマンスだけが目立った側面もある。
■「トランプ米大統領と良好な関係を築けたのは大きな功績」 (自営業・60代男性)
「とにかく長かったですよね。7年8か月。戦後の首相ですぐに名前が挙がる田中角栄さん(886日)や中曽根康弘さん(1806日)と比べても、在任期間は圧倒的に違う。ただ何をやったのか、具体的なものに欠ける。印象的なのは東京・六本木の炉端焼き店であったトランプ米大統領夫妻との夕食会(2019年5月)ぐらいかな。コロナの対応は早かったと思いますよ。緊急事態宣言発令までは。しかしアベノマスクがなじまなかったことと、『Go Toトラベルキャンペーン』を進めたのは失敗だと思いますよ」
第2次安倍政権が発足する前の日本経済は、デフレ不況にあえいでいた。安倍首相は就任時に「経済再生にロケットスタートを切る」と表明した。(1)大胆な金融政策、(2)機動的な財政政策、(3)民間投資を喚起する成長戦略―これら「3本の矢」で構成される経済政策『アベノミクス』を始動。経済政策に自信を深めた安倍首相は、2013年10月、ニューヨーク証券取引所で、「バイ・マイ・アベノミクス(アベノミクスは“買い”)」 というスピーチで積極的な投資を呼びかけた。
「アベノミクス」は円安・株高を導いた。政権発足と同時に始まった景気拡大局面は2018年10月まで71か月続いた。2012年末に1ドル=80円台だった円相場は一時120円台まで下落。1万円近辺を行ったり来たりしていた日経平均株価は、2018年10月にバブル崩壊後の最高値となる2万4270円を付けた。