アメリカ大統領選挙は7日午前(日本時間8日未明)、民主党のジョー・バイデン副大統領(77)の当選が確実になった。バイデン氏は同日夜、勝利宣言し、「分断でなく団結させる大統領になる」と誓った。一方、共和党のドナルド・トランプ大統領(74)は「勝ったのは自分だ」と主張。選挙で不正があったとして裁判で争う姿勢を示している。
バイデン氏は新政権の最優先課題として、アメリカ国内で感染が急速に拡大している新型コロナウイルス対応を挙げた。さらにトランプ政権の4年間で深まった社会の分断の克服とアメリカ至上主義からの脱却を目指すが、国内では根強い人種差別や格差の拡大といった難題を抱え、対外的にアメリカの地位を脅かす中国の台頭に直面している。日本を含む東アジアの国々はこの先、アメリカとどう向き合うのか、神戸大学大学院の木村幹教授(比較政治学、朝鮮半島地域研究)に聞いた。
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■結果見えなければアメリカにダメージ、でも予断許さず
まずは何はともあれ「当選者が確定した」という事が重要だ。北半球が冬に入る時期、世界各国では再び新型コロナウイルスの流行が拡大しており、この状況でアメリカの大統領選挙の開票が更に混乱し、結果が出るのが長引けば、経済的にも大きなダメージになってしまう。
ただし、トランプ陣営は敗北を認めておらず、2021年1月の政権引き継ぎまでの段階で何が起こるか、全く未知数。そういう意味で「まずはひと段落」だが、「長い混乱」のまだ序盤段階かも知れない、という気もしないでもない。トランプ氏はやる気になれば1月までに徹底的に妨害工作ができるため、逆転勝利へ予断を許さないと言える。
■アメリカ国内問題に専念~バイデン政権の課題
そしてバイデン政権。この政権の課題は何と言っても「当たり前の状態に戻す」こと。新型コロナの大流行もあり、この政権はしばらくは国内問題に専念せざるを得ず、活発な外交を展開する状況にはないと思っている。
日本では一部でバイデン政権がトランプ政権とは打って変わって「親・中国政策」を取るのではないか、という懸念があるようだが、歴代の民主党政権は人権問題の観点から中国に対して批判的で、主として経済問題に注目して中国を批判したトランプ政権とは異なる形で、やはり一定の範囲で中国をけん制する政策を続けるだろう。その意味では、少なくとも短期的に大きな東アジア外交の変化があるとは思っていない。