新型コロナウイルスの影響で、私たちの生活様式が大きく変わった2020年が終わり、新たな年を迎える。元日の楽しみの1つに「初日の出」があるが、2021年の幕開けは外出自粛、ステイホームのなかで過ごす、「特別な年越し」「特別な年明け」となりそうだ。そこで第5管区海上保安本部(神戸市)海洋情報部・監理課専門官の和志武尚弥(わしたけ・ひさや)さんに、初日の出にまつわるさまざまなお話を聞いた。
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例年と違い、密を作らないために、実際に初日の出を見る機会がないかもしれません。しかし皆さんにとって太陽の動きというのは普段、日常生活の中に溶け込んでしまい、あまり意識することはないだけに、新しい年を迎えるにあたり、ご自宅から空を見上げて、こういった天体の動きに思いをはせてみるのもいいのではないでしょうか。そこで初日の出にまつわる様々なお話をしましょう。
ところで「日の出、日の入り」は気象庁が調査して発表していると思っている方が多いのではないでしょうか。実は、海上保安庁が情報を提供しており、船の安全な航海のため、毎日の天体の位置を知らせるほか、日の出や日の入りの時間を載せた「天測暦(てんそくれき)」という暦を出しています。
■なぜ海上保安庁で日の出や日の入りなど天体の情報を提供しているのか?
現在では太平洋の真ん中などで船が自分のいる位置を知る方法として、GPSが普及していますね。約500年前の大航海時代からほんの数十年前までは、星や太陽、月を測ることによって船の位置を決めていました。皆さんも、太陽の方向や高度などから方位や大体の時刻を確認したりしたことがあるのではないでしょうか。
天文学、いわゆる天体を知ることは、航海者にとって欠かすことのできない知識だったんですね。このため天体の情報が必要となり、明治初期から海軍が航海者のために「天測暦」、漢字では「天を測るこよみ」と書きますが、これを刊行してきました。そして、第二次大戦後に海軍が解体された際、海上保安庁がこの事業を引き継いだのです。
「天測暦」には、太陽や月、金星や木星といった惑星などの毎日の天体の位置や日の出、日の入り、月の出や月の入りなどの情報が掲載されています。このほか日食や月食の情報、サンフランシスコやシドニー、上海など世界の大きな港の日出、日の入時刻なども掲載されています。世界をまたにかけて航海する船舶と天体の情報とは、切っても切れない関係にあるのです。