1.17、祈りの朝が来た。26年前、暗闇の中、凍える体を包むものはなく、ただ茫然と立ち尽くした私たち。数分前まであった居場所が、わずか数十秒で無残な姿に変わる。四半世紀を越え、自然災害・自然の脅威への対処は「防災・減災」という形で意識づいたように見えた。しかし世界を襲った見えない魔物・新型コロナウイルスとの向き合い方に答えを見い出せていない。
阪神・淡路大震災から26年。犠牲になった人々への鎮魂の祈りは同時に、新型コロナウイルス収束への祈り、そして生き方の変容を求められながらも、必ずや日常を取り戻す誓いとなる。
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神戸薬科大学に通う能楽師・西尾 萌さん(20・大学2年)が西宮市で生まれたのは「ミレニアム・イヤー」となった2000年。1月に明石市の仮設住宅の解消を最後に被災地の仮設入居者がゼロとなった。そして2月に政府の復興対策本部が解散、5年という一つの節目を迎えた。3月には184日にわたる淡路花博(ジャパンフローラ2000)が淡路町・東浦町(現・淡路市)で開幕した。この年、政府が「激甚災害」の指定基準を緩和する。
その後、日本列島は東日本大震災や熊本地震、さらに幾たびの風水害にさいなまれる。そして20年経ち、世界中で新型コロナウイルスという見えない敵と対峙することになろうとは誰が予想できただろうか。こうした中、新たな歴史を紡ごうとする20歳の女性が、被災地から世界へ伝統文化の伝道師としてはばたく。
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■「世界最古」といわれる日本独自の舞台芸術『能』、その魅力に取りつかれるまで