尼崎市の路上で2019年11月、特定抗争指定暴力団・神戸山口組の男性幹部が射殺された事件で、殺人・銃刀法違反などの罪に問われた、対立する特定抗争指定暴力団・六代目山口組の元組員(53)の初公判が8日、神戸地裁で開かれ、検察側は無期懲役を求刑して即日結審した。判決は2月19日。
特定抗争指定暴力団「六代目山口組」と「神戸山口組」。これら「2つの山口組」の抗争とされる2019年に発生した事件の刑事裁判について、裁判員裁判とするかどうか、神戸地裁の判断が分かれ、この裁判は対象から除外された。一連の抗争で当初、神戸地検が起訴したのは4件の事件で5人(うち1件は被告が拘置所内で2020年12月に病死、公訴棄却)。
起訴状によると、元組員は2019年11月27日午後5時すぎ、尼崎市神田南通の路上で、神戸山口組幹部(当時59)に自動小銃で弾丸15発を撃ち、死亡させたとされる。さらにその後、神戸山口組の別の組員を殺害するため、自動小銃1丁と回転弾倉式拳銃1丁、銃弾39発を隠し持ち、京都市南区まで車で向かったなどとされる。
元組員は起訴内容を認め、被告人質問で動機について「神戸山口組は裏切者だから」と述べ、犯行の約1か月前から20回程度の下見を重ねたことを明かした。そして「実は神戸山口組の幹部5人を襲撃しようとしていたが、ガードが固く、タイミングも合わなかった」などと犯行への経緯を振り返った。被害者となった幹部については「携帯電話のサイトで居場所などが記されており、これならいけると思った」と話した。
そして「自動小銃で撃った後、あおむけに倒れた幹部を上から見下ろすように、確実にとどめを刺すためにさらに撃ち込んだ。意外に冷静だった」などと当時の心境を語った。
一方、弁護側は、元組員が六代目山口組と対立する神戸山口組へに対する「『許せない』という個人的な思いから行った」として、六代目山口組の組織的な関与を否定した。しかし検察側は「組織からの何らかの指示や支援があった」と指摘、「強固な殺意と綿密かつ周到な犯行計画のもと、対立組織への威嚇と報復を図る暴力団特有の方法であり、被告本人は『組織から破門された』と主張するが、あくまでも組織の自己防衛のために組織からの離脱を装ったに過ぎず、市街地の一角で与えた住民への恐怖は計り知れない」などとして無期懲役を求刑した。