事件を追う新聞記者の計らいで、正夫は文枝の住む東京へ高飛びする。物語の後半は東京へと舞台を移すが、神戸と東京に勤務する新聞記者の兄弟を大坂志郎が二役で好演している。
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ロケ地は戦後10年余の神戸。当然ながら、現在も変わらない場所と、かつての神戸、両方が楽しめます。
戦火を免れた洋館や教会をはじめ、神戸の一番の魅力といえる、山と海のある風景は今も変わりません。
正夫が淡い恋心を寄せる文枝と神戸で1日を過ごすシーンでは、まやケーブルに乗って山上にのぼり、海がひろがる神戸の風景を眺め、神戸港から遊覧船に乗って、山がひろがる神戸の風景を満喫します。そして文枝は元町の大丸でおもいっきりお買い物。正夫が両手いっぱいの荷物を運んでいます。
現在、まやケーブルは車両をリニューアルし、かわいい姿で山を疾走。神戸港周遊船は、海から見る神戸を楽しむスタイリッシュな船として存在感を際立たせています。神戸のデートコースの様子は、昔も今も変わらない魅力を放ち続けます。
一方、夜な夜なにぎわうナイトクラブの背景には、湊川公園に建てられた展望塔で、かつて日本の三大望楼とよばれた「神戸タワー」がそびえます。新聞記者との密会シーンは、阪神高速道路の高架建設前のメリケン波止場。北側出口への大階段がある改修前の神戸駅の姿も、映画の中で見ることができます。
映画に登場した場所は、いずれも三宮から神戸にかけての便利な場所なので、神戸のシーサイドコースを『聖地巡礼』するのもおすすめです。
ご紹介しました「ゆがんだ月」。主人公の青年のやるせない思いと夜の神戸の水面に映る月の形が重ねられているのでしょうか……。