コロナ・リバウンド阻止「待ったなし」 営業時短命令をどうみる? 弁護士・藤本尚道さん | ラジトピ ラジオ関西トピックス

コロナ・リバウンド阻止「待ったなし」 営業時短命令をどうみる? 弁護士・藤本尚道さん

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 飲食店を「雨が降っている場所」にたとえるなら、雨に濡れる量を減らすために時間を短くすることは一見効果的であるように見えます。しかし、雨をはじく傘や合羽などをきちんと用意すれば、時間を短くしなくともほとんど雨に濡れないようにすることが可能です。つまり、飲食店での感染防止策(飛沫感染防止の観点から対面を含めたアクリル板の設置、エアゾル防止の観点から換気装置の改善など)を具体的かつ積極的に推し進めれば、時短営業など要請しなくとも飲食店におけるクラスターを防止することが可能です。

 すなわち、時短営業が唯一無二の有効策とは言えないにも関わらず、国は飲食店の時短営業だけに軸足を置き、国民にも強く自粛を求める形で「緊急事態宣言」を繰り返し継続してきたに過ぎません。このような時短政策そのものに問題があり,憲法が保障する営業の自由を害し,国民の財産権を正当な理由なくして侵害しているとの評価が可能です。

 この間、飲食店への時短要請にあたって、一店舗あたり一律の補償(日額6万円)がなされてきましたが、この一律補償の方策は、一店あたりの経営コスト(家賃・人件費・仕入額)をまったく無視する結果、店舗の規模による大きな不公平を招きました。小規模な飲食店では「時短バブル(通常営業するより利益があがる)」となった店がある一方、大規模な飲食店にとっては補償金が家賃にすら満たないという大きな不公平です。今回提訴した原告会社は、まさに大規模な飲食店を数多く運営しており「雀の涙」のような補償だけでは店が大赤字になるため、時短に協力せず営業を続けざるを得なかったという事情があるようです。このように飲食店の個々の実情を勘案しない「一律補償」のありかたも,実質的な不公平を招く点で憲法14条違反の疑いを生じます。

薄暮の大阪・道頓堀 平日の人出はこのあとも増えなくなっている
薄暮の大阪・道頓堀 平日の人出はこのあとも増えなくなっている

 日本では古くから周りとうまく同調し、為政者に逆らわないことこそが「美徳」という考えが強いため、今回の原告会社 グローバルダイニングに対してはなかなか理解が得られないのではないかと憂慮します。しかし、1年前を振り返ると、国民経済に対する影響を配慮したり、五輪開催可能性を考慮したりという国の政策的・政治的判断から、緊急事態宣言などの対処を遅らせることとなり、「後手後手」の対応に終始した結果、感染拡大となりました。これら行政側の不手際によって、個々の事業者に大きな負担がのしかかっているという事実を忘れてはいけません。

藤本尚道弁護士
藤本尚道弁護士

◇藤本尚道(ふじもと・まさみち)
1958(昭和33)年6月、神戸市生まれ。神戸大学法学部卒業。兵庫県弁護士会所属(司法修習38期)、2004(平成16)年度兵庫県弁護士会副会長・会長代行、兵庫県立大学客員教授など歴任。神戸市中央区にハーバーロード法律事務所を開設。

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