2004年に兵庫県・淡路島の洲本市で発見された恐竜化石が新属新種とされ「ヤマトサウルス・イザナギイ」と命名された。日本で発見された恐竜化石に学名が付けられるのは9例目となる。
化石を発見したのは、化石愛好家の岸本眞五さん(72)。
「その日は朝7時ごろから化石を探していたがいい成果を挙げられなかった。午後4時ごろ、それまであまり入ったことのない場所に行ってみたところ、割れた岩肌に2枚貝のようなものを見つけた。よく見ると貝ではない。海の地層にこんなに大きな動物はいない。モササウルスか首長竜か……違う。陸にいた大型の動物は……恐竜だ」
足ががくがく震えて止まらなかったと、当時を振り返る岸本さん。この化石発見を受けて、兵庫県立人と自然の博物館などの調査チームが2回調査に入り、合わせて23点の化石を見つけ、翌年、ハドロサウルス科のランベオサウルス亜科に属すると発表していた。
その後、北海道大学総合博物館の小林快次教授、岡山理科大学の高崎竜司研究員、兵庫県立人と自然の博物館の久保田克博研究員、アメリカ・サザンメソジスト大学のアントニー・フィオリロ博士の研究グループがさらに調査を進め、この恐竜はランベオサウルス亜科ではなく、新種新属の原始的なハドロサウルス科であるとして、「ヤマトサウルス・イザナギイ(伊弉諾の倭竜)」と命名し、発表した。
発見された化石は23点と全身からみるとごく一部だが、この中には下あごや烏口骨など重要な部位が含まれており、これらを改めて研究することで他のハドロサウルスにはみられない特徴がわかった。
肩の部分に当たる烏口骨をみると、進化したハドロサウルスに見られる突起がヤマトサウルスにはない。この骨は前肢と肩の部分をつなぐもので体の動きに直結する。進化速度の解析から、その形態の変化がハドロサウルス科の初期の進化に重要な役割を果たしたと考えられるという。