神戸市中央区で2019年、対立する特定抗争指定暴力団「神戸山口組」の傘下組織組長を包丁で刺したとして、殺人未遂などの罪に問われた特定抗争指定暴力団「六代目山口組」系組員2人に対し、神戸地裁は19日、組員A(58)に懲役11年、組員B(54)に懲役9年の実刑判決(求刑 懲役14・12年)を言い渡した。
2人は2019年4月18日午前0時すぎ、神戸市中央区の商店街の路上で、神戸山口組傘下組織組長(67)の背中や尻を後ろから包丁で刺し、約1か月の重傷を負わせたとされる。
2019年に起きた「2つの山口組」一連の抗争事件は、この事件が起点とされる。この年11月の神戸山口組直系組長射殺事件に至るまで、「2つの山口組」の報復とされる事件が4件相次いだ。また特定抗争指定暴力団となる契機ともなった。
争点は▼対立抗争事件としての認識の有無▼2人の共謀関係 ▼殺意の有無の3つだった。
検察側は論告で「あらかじめ凶器や逃走用車両を準備して、執拗に被害者の行動を確認するなど計画性の高い犯行」と指摘。動機は「(自らが所属する)組へ強い忠誠心を持つ2人による対立組織への報復だった」と述べ、抗争事件であることを改めて強調した。
■「抗争なら、拳銃を使うなど確実に殺すが…」
2015年8月に山口組が分裂、対立抗争の緊張が続く中、2人は所属組織で、抗争の際の出動部隊の役割を担っていたが、被告の1人は法廷で「時期的に、対立組織の幹部を襲ったので、抗争と思われても仕方ないが、もし抗争という捉え方をするなら、拳銃を使うなど確実に殺害する方法を考えるはずだ」と述べ、抗争事件であることや共謀関係を否定した。しかし兵庫県警の捜査員は証人尋問で、分裂後の一連の流れなどを踏まえて、客観的に抗争事件であると証言した。