泰代さんは続ける。「季節に応じたものを、お客さまの生活に取り入れていただけるのが和菓子の魅力。その結果が”お進物”なんです。ただ、進物として受けるだろうと先に考えると、見掛け倒しになることが多いですからいけません。ご家庭の”おやつ”にしていただけるものが売れて、それをよそさんにお持ちいただく、これが1つの評価と違いますやろか」
こうした思いから、「うちが京都の烏丸近辺(六角通高倉東入ルと高倉通四条上ル)しか店を出さないのは、味を落とさず、はじめに好(す)いていただいたままの味を守りたいからなんです。常に目が届くように、お菓子に独り歩きはさせません」泰代さんは、この先もこの精神は守り通したいという。
世間はコロナの影響で「巣ごもり」と呼ばれる、自宅で過ごす時間が増えた。泰代さんは、地元の会合などで茶菓子を出す機会がめっきり減ったという。ただ「お取り寄せ」が増えたのは、自宅で過ごす時間が多くなったのが影響したのではないかとみている。しかし本心は店での対面販売で、お客さんの表情や動きを見て商品を渡したいという。
「たとえばお饅頭を1個買い、2個買いされるお客様と接するときは緊張しますよ。ただ、お進物だけ、お箱で買われる時は心配なんです。もちろん”お風味(サンプル品)”はお付けしますが」泰代さんは、足を運んでくれるお客さんに見て納得してもらうのが一番嬉しいという。
■1150年以上続く「祇園祭」、疫病退散の本来の姿に
24日は、本来なら祇園祭のハイライトともいえる「後祭(あとまつり)」山鉾巡行。コロナの影響で巡行は2年連続で取りやめに。