まず目に飛び込んでくるのが、カウンターや棚に並ぶ本の数々。すべて田中さんが選んだものだといい、小説やエッセイから雑誌まで幅広く取り揃える。コーヒーは通常、『軽め』『深め』『タテイト(特に深煎り)』の3種類をラインナップ。注文を受けてから、田中さんがハンドドリップで一杯ずつ、お客さんの目の前で丁寧にいれる。本を読みながらカップを傾けるもよし、店主と和気あいあいとおしゃべりを楽しむのもよし、その日の気分に合わせた楽しみ方ができそうだ。
田中さんはもともと、大手企業のサラリーマンとして働いていたが、「60歳(定年)を想像したときに、それまでぶら下がることもできるけど、自分の足で歩きたい」と一念発起、2018年5月に店をオープンさせた。店は田中さんの趣味がいたるところにちりばめられている。例えば店内にはジャンルを問わずレコードが流れていて、レコードジャケットが壁に飾られていたり、田中さんが好むというストリートファッションを象徴するような、NBA(米プロバスケットボールリーグ)で活躍する選手のユニフォームがかけられていたり……。田中さんは、「自分自身が飽きてしまってはいけないので」と笑うが、不思議と雑多な印象は受けず、センスが光っている。
「つらいこともあったサラリーマン時代でしたが、そんなときに足しげく通っていたのが喫茶店。自分自身の受け皿にも、他の誰かの受け皿にもなれるよう、まずは10年やりたいですね」という田中さん。街中の喧騒とは一線を画した店内で、自分自身をいたわる、心休まる時間を過ごせることは間違いないだろう。
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◆『歴パ!ひょうごの地域遺産バトンリレー』 2021年8月28日放送分