東京・池袋で2019年4月、暴走した乗用車にはねられた母子ら11人が死傷した事故で、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)に問われ、禁錮5年の実刑が確定した旧通産省工業技術院・元院長の男(90)が12日、 東京・霞が関の東京地検に出頭、拘置所へ収容された。男は今後、受刑者として健康状態を改めて確認するなど所要の手続きを経て刑務所に収容される。
身柄を拘束されず(逮捕されず)に在宅のまま起訴された男は、東京地裁で開かれた公判で自身の過失を否定し、無罪を主張していたが、9月15日、犯罪加害者家族の支援をしているNPO理事長と面会し「被害者や遺族の方に申し訳ない。罪を償いたい。収監を受け入れる」と控訴しない意向を示していた。
刑事訴訟法には、健康を著しく害する場合や、年齢が70歳以上の場合、検察官の裁量で刑の執行を停止できる規定がある。ただ、実際に停止されたケースは極めてまれで、収監されても禁錮刑のため、懲役刑と違い刑務所での労務作業は科されない。
関西でも交通事故で最愛の家族を失った遺族が一連の推移を注視していた。3回にわたり、遺族や弁護士に「運転免許」と「司法判断」のあり方を聞く。
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◆大阪・ミナミのアメリカ村で2015年、3人が死傷した飲酒暴走事故で、看護師の河本恵果さん(当時24)を失った母親、友紀さんは「被告の男の発言などを見聞きすると、遺族の立場としては生涯を刑務所で服役すべき」という思いを抑え、次のように答えた。
「今の日本の刑事裁判は命を絶たれた被害者より、加害者の更生ばかりが優先され、情状の酌量を認めるといったハードルが低い判決に偏りがちだと指摘される中、今回の東京地裁の判決は亡くなられた松永真菜さん(当時31)、莉子ちゃん(当時3)、そして遺族である夫・拓也さんに寄り添ったものだったと思う」