検察側、被告の「心神耗弱」考慮 無期懲役求刑 神戸・5人殺傷事件 裁判員裁判 神戸地裁

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 神戸市北区で2017年、祖父母や近隣住民ら5人を殺傷したとして殺人・殺人未遂・銃刀法違反など5つの罪に問われた無職の男(30)の裁判員裁判・第7回公判が25日、神戸地裁で開かれ、犯行当時の男を「心神耗弱(こうじゃく)状態」とした検察側は無期懲役を求刑、弁護側は無罪を求め結審した。判決は11月4日。

開廷前の神戸地裁・法廷<2021年10月25日 ※代表撮影>
開廷前の神戸地裁・法廷<2021年10月25日 ※代表撮影>

 刑法39条では「心神喪失者の行為は罰しない。心神耗弱者の行為は刑を減軽する」としている。

 男は罪状認否で事実関係は認めたものの、弁護側は事件当時、統合失調症により善悪を全く判断できない「心神喪失状態」だったとして無罪を主張、最大の争点は男の刑事責任能力の有無となる。

 事件は2017年7月16日早朝に発生、起訴状によると男は神戸市北区の自宅で祖父母(いずれも当時83歳)の首を包丁で刺すなどして殺害後、近くに住む女性(当時79歳)も刺殺。さらに母親と近所の女性も金属バットなどで襲い、重傷を負わせたとされる。

神戸地裁 判決は11月4日
神戸地裁 判決は11月4日

 検察側は、男が犯行の2日前、インターネットの書き込みで、専門学校に通学していた際の同級生の女性のものとみられる投稿を解析して、自分へのメッセージと受け止めた男が「自宅近くの神社へ行けば、この女性と結婚できる」との妄想を抱いて犯行を決意したと指摘。2度の精神鑑定結果から、善悪を判断する能力は低下していたが、一部は残されており、「心神耗弱(こうじゃく)状態」だったとしている。
 一方弁護側は、男が幻聴で「この女性と自分以外は人間ではない」、さらに「家族を殺せ」などと指示されていたと主張している。男が統合失調症であるという指摘は、双方に共通する。

検察側、「肝炎責任能力があれは死刑求刑事案だが、被告は心神耗弱のため」無期懲役を求刑<2021年10月25日 ※代表撮影>
検察側、「肝炎責任能力があれは死刑求刑事案だが、被告は心神耗弱のため」無期懲役を求刑<2021年10月25日 ※代表撮影>

 検察側は論告で、女性と自分以外は人間ではないとする被告の主張を否定、犯行直前・犯行中・犯行後にわたる言動に正常な精神構造が機能していたとして「(殺害、負傷させた)相手が人(人間)だという認識はあった」と指摘した。
 根拠として、犯行中、金属バットで殴られ痛がる祖母(死亡)に対する「かわいそう」との供述や、苦しむ母(重傷)に対して「楽にしたるわな」との発言、犯行直後、身柄を確保され連行された際に「人を殺してしまった。大変なことをした」、その後も「僕も死んだ方がいいですよね」などと述べていることを挙げた。
 そして▼金属バットで多数回の殴打、包丁を使い首や頭などを狙い、執拗に刺して失血死や重傷を負わせた▼遺族の処罰感情が大きい▼心神耗弱は考慮、統合失調症治療の必要性は刑事責任の軽重とは別個の問題であり、服役中でも治療可能 などと述べた。
 そのうえで「完全責任能力があれば死刑を選択すべきだが、心神耗弱の場合は、法律上刑を減軽しなければならない」として無期懲役を求刑した。

弁護側、改めて無罪主張し結審<2021年10月25日 ※代表撮影>
弁護側、改めて無罪主張し結審<2021年10月25日 ※代表撮影>

 一方弁護側は、検察側の指摘を踏まえても「女性と自分以外は人間ではない」という認識は揺るがず、妄想に支配された「心神喪失状態」であり、正常な精神機能により犯行を思いとどまることは期待できなかったとして、改めて無罪を主張して審理を終えた。

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