事故現場へ向け、命懸けで氷上を走らせるのは巨大トラック そして紡がれる絆 映画『アイス・ロード』レビュー | ラジトピ ラジオ関西トピックス

事故現場へ向け、命懸けで氷上を走らせるのは巨大トラック そして紡がれる絆 映画『アイス・ロード』レビュー

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 凍てついた湖の上に伸びる“氷の道”の上を巨大トラックで走る。ひとえに事故現場の人たちを救うため。時間に猶予はない。氷はひび割れ、崩れていく。命懸けのミッション、果たして……? 今作を、映画をこよなく愛するラジオパーソナリティー・増井孝子さんが解説します。

『アイス・ロード』© 2021 ICE ROAD PRODUCTIONS, LLC ALL RIGHTS RESERVED

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 カナダには湖や沼、河川が非常に多い。だから、道や橋の建設には維持費を含めて膨大なコストがかかる。ところが、1月~3月の厳冬期、遮るもののない湖の上にまっすぐ伸びる氷の道“アイス・ロード”が出現する。これは政府が、車両の重量や制限速度での走行などを徹底的に管理した上で凍った湖面に作る、正式な“道”なのだ。この“道”によって、この時期の往来はとても効率的で、便利なものとなる。

 4月のある日、カナダ北部のカトカのダイアモンド鉱山でメタンガスが爆発。26人の作業員が地下に閉じ込められるという事故が起こる。酸素が切れるまで猶予は30時間しかない。救出に必要な坑口装置を運ぶにも、重量がありすぎて飛行機やヘリコプターは使えない。選ばれたのは巨大な30トントラック。陸路を走り、結果的にどれか1台でもたどり着ければOKと用意されたのは3台だ。装置を積み、最短ルートであるアイス・ロードを走って鉱山へ届けることになる。

 しかし4月は、本来アイス・ロードは閉鎖されている。氷の厚さも強度も失われていっているこの時期に通るのは危険だ。だが、生存のタイムリミットが迫る中、それ以外の選択肢はない。もしスピードが速過ぎれば衝撃で、遅過ぎれば重量で、トラックは水中に沈んでしまうことになる。そんな命がけのミッションに挑むのが、運輸会社の経営者 ジム・ゴールデンロッド(ローレンス・フィッシュバーン)だ。

 彼が他に選んだ2組のトラックのドライバー。まずは、アイス・ロードの経験者でもあるベテランドライバーのマイク・マッキャン(リーアム・ニーソン)と、その弟で腕のいい整備士のガーティ(マーカス・トーマス)。ガーティは、イラクの戦地で負った傷がもとで失語症になったことから仕事場になじめず、マイクがずっと面倒をみてきた。そしてマイクも職を失った。そこで、成功した者で分ける20万ドルという高額な報酬に魅力を感じ、危険を承知で今回の仕事を引き受けたのだった。

 もう1台のトラックには、ジムの元部下の女性 タントゥー(アンバー・ミッドサンダー)。先住民・クリー族として誇り高く生きようとするがあまり、いつもトラブルを起こしてしまう。今回も留置場にいたところ、ジムが腕を見込んで保釈金を払い、チームに加えた。しかも、坑道に閉じ込められて安否不明の作業員の中に、兄のコーディ・マントゥース(マーテイン・センスマイヤー)が含まれており、何としても助けに向かいたいと、危険を顧みずハンドルを握ることを決心。そして彼女のトラックには、会社の命令で同行する保険会社のトム・バルネイ(ベンジャミン・ウォーカー)が同乗することになる。

 自然との闘いに加え、何やらきな臭い陰謀も浮かび上がり、手に汗握る旅が続く。果たして一行は、アイス・ロードを駆け抜け、無事に坑口装置を届けることができるのか?

 1953年に公開されたアンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督の『恐怖の報酬』を思い出すという人もいるだろう。カンヌとベルリンの両映画祭で最高の賞を取った作品。ベネズエラを舞台に、イブ・モンタンとシャルル・ヴェネル演じるフランス人の移民コンビが、山上の油田で起きた火災を消すためにトラックでニトログリセリンを運ぶという話。その後1977年には、ウィリアム・フリードキン監督がリメイク。“ハラハラドキドキ”ジャンルの代表作といってもいい。


【『アイス・ロード』公式サイト】

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