「シウマイ」以外のおかずは、まねき食品が培った駅弁づくりの伝統を生かした関西ならではの品々を取り揃え、ダイスカットの「筍煮」は姫路名物・えきそばのだしで炊き、播州の祭り文化を意識して「拍子木切り筍煮」に。「鶏の唐揚げ」はご当地、ヒガシマル醤油(兵庫県たつの市)の薄口しょうゆとあごだしで下味を付けた。
「鮪の漬け焼」は柚子が香る「鯖の幽庵焼」に。「玉子焼き」は関西風「だし巻玉子」。そして崎陽軒のシウマイ弁当で、おかずか?デザートか?で必ず話題となる「杏(あんず)」に代わり、甘辛く炊いた黒花豆を入れた。当初、ドライトマトを使ってみては、という話もあったという。
最も苦労したのが米の硬さ。崎陽軒は水蒸気を使って米を炊きあげる「蒸気炒飯方式」でモチモチ感を出しているが、まねき食品は、これまで作っていた駅弁にない少なさの水分量で炊き上げた。
岩本さんは「正直、お米の味をしっかり感じられる状態にすることが課題でした。容器に経木(きょうぎ)の折りを使用していますが、ご飯から出てくる水分を容器の経木が吸収して、冷めても美味しく食べられるように、ひと粒ひと粒を味わい深くすることが求められたのです。姫路の自社工場で米を炊いては、横浜の崎陽軒さんにお持ちしてチェック。あくまでも自社工場で同じ味を再現させることが重要なんです。ダメ出しは何度も何度も。勉強になりました」と振り返る。
関東風、関西風で味に違いがあることは言わずと知れた日本の食文化。「シウマイ弁当」は盛り付けも含めて、”似て非なるもの”というのが老舗・まねき食品の信条。それぞれのパッケージデザインもしかり。崎陽軒のシウマイ弁当のパッケージはイエローだが、まねき食品の関西シウマイ弁当はオレンジ。