崎陽軒の「シウマイ弁当」は現在、1日あたりの販売が約2万7千食。慢性的に消費が低迷する弁当のコロナ禍で、ラインナップを絞るなど、さまざまな工夫が求められた。最も厳しかったのはコロナ禍に突入した2020年春。前年に比べ売り上げが6割以上減少した。
まさに背水の陣、とにかく生き残りを掛けなければならない。コロナ感染が拡大する中、観光客、ビジネスマンが駅から消えて行く。新幹線の予約状況が2割を切り、それに比例して売り上げも減る。世界遺産・姫路城へ向かう玄関口、JR姫路駅の新幹線乗り場へのエスカレーターがついに止まった。当時、店舗運営に携わっていた岩本さんは足が震えた。かつてない危機を感じたという。
もともと駅弁は「大商い(あきない)」できる市場ではない。人流抑制がボディブローのようにきいてきて、立ち直れなくなる日が来てしまう、そんな危惧感がふくらみ、この企画が生まれたのだ。
必死さとひたむきさ。崎陽軒の担当者は「”シウマイ弁当ブランド”を使う以上、クオリティに関しては妥協を許すことができない部分でした。姫路と横浜で距離がある中、何度ダメ出しをされても試作を何度もお持ちいただいた部分で熱意を感じました」そう振り返る。
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「関西シウマイ弁当」は関西のだし文化を全面的に打ち出した。
まず、「シウマイ」は崎陽軒が関西風にアレンジした。昔ながらの一口サイズは、本家・崎陽軒のものと同じ。本家は干帆立貝柱を使用しているが、関西シウマイは昆布だしと鰹節で旨味を引き出し、豚肉と鶏肉ミンチに刻みレンコンを混ぜ込むことで、食感と風味に違いを持たせた。