このほか、関西では名の知れた「えきそば」は、太平洋戦争後の1949(昭和24)年に生まれた、中華麺に和風だしというミスマッチな商品。姫路駅といえばえきそば、「だしの香りにそそられて、つい立ち寄ってしまう」ほど、世代を超えて愛されている。
新型コロナウイルス禍で、駅弁の売り上げの落ち込みは深刻だ。一般的に外食よりも、ロードサイドのドライブスルーやテイクアウトの売り上げが大きく伸びたとされている。しかし岩本さんは「外出自粛と呼びかけられて往来できない中、駅の乗降客はほとんどいない。そりゃ駅弁を買って行かれるお客さん、いらっしゃいませんわな」。創業134年の老舗に突き付けられた現実を語る。
まねき食品の売り上げも、通年の7割減という壊滅的な状況になったという。
コロナ感染拡大第1波が押し寄せる2020年3月、「駅に元気がない…これから、どうなるんだろう」。社内でも何か良い手はないか、議論はあった。こうした中、日本で一番売れる駅弁を出している崎陽軒とコラボレーションできないだろうかと、竹田典孝社長が直談判した。
だが崎陽軒は、首をタテには振ってくれなかった。岩本さんは言う。「何といっても、シウマイは崎陽軒さんの看板商品ですからね」。無理もない。
ただ、まねき食品は日本で初めて幕の内駅弁を作った会社。「何度も何度もお願いにあがりました」。歴史的な信頼と真摯に向き合う熱意が、崎陽軒の心を動かした。「低迷している駅弁業界から明るい話題が生まれたら。逆に元気を届けようやないか!」。根底にこの思いがあった。