トマトといえば夏野菜というイメージが強いが、冬が旬のトマトがあることをご存知だろうか。その名も「フルーツトマト」。フルーツトマトという品種があるわけではなく、特別な栽培方法で作られた高糖度のトマトのことを指す(※)。小ぶりながら、甘味、酸味、うまみを多く蓄えており、夏のトマトは栽培時に水を与えないとすぐに枯れてしまうが、フルーツトマトは低温で水分も極力減らし、通常よりも長期間かけて栽培される。(※=農林水産省 公式ホームページより一部引用)
初めて登場したのは、1970(昭和45)年、台風10号が襲来した高知県でのこと。記録的な豪雨と高潮によって、高知市内を流れる久万川の堤防が決壊。海に近い徳谷地区の畑に海水が流れ込み、台風が去った後も土壌に強い塩分が残ってしまった。生産者は、絶望にうちひしがれながらトマトの栽培を再開したそうだ。
果たして、何とか育ったトマトの木は弱々しく、できたトマトの実はピンポン玉ぐらいの小粒だった。ところが食べてみると、味が濃厚で甘みも強かったそう。これが高知のフルーツトマトの始まりだという。
発祥の地となった徳谷地区では、今もフルーツトマトを栽培。地域ブランドとして確立した「徳谷トマト」が10数軒で生産されている。販売にあたっては、生産者ごとの味わいを区別するため、生産者番号を付けている。
また、栽培方法を工夫。水分を最小限に抑えつつ日照量を増やせるようにと、防根透水(根が外へ余計に伸びるのをさえぎり、水と栄養分のみ通す)のシートで土壌の水分を調整したり、かん水の制御装置を取り入れたり、立体栽培で日照量を増やしたりしている。
栽培期間も長い。夏のトマトが50~60日で出荷されるなか、フルーツトマトは100日ほどかけて育てられている。その結果、糖度が上昇。一般のトマトが3~6度なのに対して、フルーツトマトは8度以上と、一般のトマトの倍以上になるそうだ。10度を超える、フルーツ並みの甘さとなるものもあるという。
高知県のフルーツトマトは、主に仁淀川地区、高知地区、香美地区で作られ、「徳谷トマト」のほかにも、「シュガートマト」「夜須のフルーツトマト」などのブランドがある。
よりおいしい「フルーツトマト」を見分けるには、4つのポイントがある。