売り上げは前年比で9割ダウン、さらに第2工場を建てたところで億単位のお金を使っていたことも影響した。崖っぷちならぬ、「崖から落ちた状況となってしまった」と中島さん。そんな絶望といえる状況でも、意外と冷静に考えられたと話す。
「まずコロナが終わった後にどうなるのかを考えるために、スペイン風邪を調べたんですよね。社会がどう変わっていくか考えたときに、この現代社会だとウイルスは簡単には収まらず、5~10年はこの状態は続くと予測を立てました。だから、その間も耐えられるように体制を考え直していきました」
着手したのは、販路。今までの飲食店やお土産屋などから、スーパー向けに切り替えていくというものだ。
ただし、スーパー向けの場合、常温流通できることが求められ、ビンではなく、缶の商品開発が必要に。しかし、クラフトビールは技術的なハードルが高く、瓶の要冷蔵の商品がほとんど。中島さんは、4~5年前から缶ビールの開発を進めていたが、やってもやってもおいしくないビールができあがるなど、悪戦苦闘していたよう。
「味を犠牲にしてやってしまうと、この仕事の意義が根底から覆されてしまいます。市場で流通しているものよりおいしいから、値段が高くても買ってくださいねという商品なので、おいしいのに流通性が高い商品を開発する必要がありました」
その味への強い熱意もあって、最初の緊急事態宣言からわずか2か月で常温流通可能な非加熱、無ろ過製品の開発・販売開始にこぎつける。その後、大手スーパーでの取り扱いや、JRの駅ナカコンビニなどでの限定ビールの販売を進め、次々と新たな販路を獲得。阪神タイガースとのコラボビールも販売した。
苦境でも挑戦を続けている、中島さん。「今後は、新作をもっとやりたいなと思っています。飲食店さん向けに、樽で商売をやっていたときは、月2種類でやっていたんです。だから、缶ビールでも同じくらい、月2~3作を出す勢いでやりたいです」。
六甲山の麓から生まれる新しい味にこれからも注目だ。
※ラジオ関西『ピンチのあとにチャンスあり!』2021年11月26日・12月5日放送回より
◆神戸・六甲ビール醸造所
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