JR福知山線脱線事故の発生から17年を迎えた25日、遺族・負傷者それぞれが、これまでを振り返り、今後どう歩むかを考える日となった。
脱線した列車の最後の停車駅となったJR伊丹駅前(兵庫県伊丹市)の「カリヨンの鐘」が、この日3年ぶりに鳴らされ、負傷者らが事故発生時刻の9時18分に黙とうを捧げた。そして関西を中心に活躍するストリートピアニスト、スミ・ワタルさんが近くのホールで追悼と癒しのコンサートを開いた。伊丹市では、市民18人が犠牲となった。
コンサートは、事故車両の3両目で大けがをした伊丹市在住の増田和代さんが3月に依頼して実現し、人間としての優しさと助け合い、そして公共交通機関の安全への思いが込められている。
増田さんは母とともに、当時開催されていた「愛・地球博(愛知万博)」へ向かうために快速電車に乗車。事故で腰の骨を折るなど重傷を負った。その後、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、過呼吸やパニック障害にも苦しんだ。睡眠薬や抗うつ剤が手放せない生活が続いた。
17年経っても癒えない心と体の傷。突然恐怖感が襲う「フラッシュバック」と、収まることがない痛みと向き合う中、いつも、「生かされた命に感謝して事故で亡くなった乗客・乗員107人に『安心・安全な社会になったよ』と胸を張れるような社会にしたい」と訴える。
スミさん自身も、この事故のことは覚えていた。しかし、増田さんからの働きかけがなければ「ひとつの出来事」としてしかとらえてなかったと話す。