2022年2月22日の「猫の日」前後、TikTokでは、あのねのねの往年のヒット曲「ネコニャンニャンニャン」で踊る若者が続出して話題になりました……。若者に支持されるSNS上で今、何がおこっているのでしょうか? TikTokでバズっている昭和歌謡の系統について、シンガーソングライター・音楽評論家の中将タカノリと、シンガーソングライター・TikTokerの橋本菜津美が紹介します。
【中将タカノリ(以下「中将」)】 菜津美ちゃんと言えば、橋本兄妹(兄・橋本大祐と結成しているコントユニット)として話題のTikTokerですが、今、TikTokでは昭和歌謡がすごくバズってますよね。
【橋本菜津美(以下「橋本」)】 たしかにめちゃくちゃバズってます! 原曲がそのままバズってるパターンもあれば、誰かがカバーしたり踊ったりしてバズってるパターンも……。今の歌手は音楽番組で口パクだったり、写真も加工されていたりが普通なので、昔の歌手を見るとクオリティーの高さに感動するんだと思います。
【中将】 たしかにそういうコメントは多いですよね。音楽的にも今の音楽番組はほとんどカラオケだから、昔の豪華な生演奏を聴くと新鮮に感じるのかもしれません。
【中将】 今回はそんな感じでTikTokでウケる昭和歌謡の傾向について分析していきたいと思うんですが、そういえば2月22日の「猫の日」前後、あのねのねの往年のヒット曲「ネコニャンニャンニャン」(1979)がバズってましたね。
【橋本】 「ネコニャンニャンニャン イヌワンワンワン カエルもアヒルもガーガーガー」……バズりましたね! 学生っぽい若い子たちから、ちょっとエッチな感じのお姉さんまで、みんなやってました(笑)。
【中将】 テレビのニュースで話題になっていて、半信半疑でTikTokを見てみたら、ほんとにみんなやってるんですよね。カップルがお揃いの服着て「ネコニャンニャンニャン……」ってやってるのは、正直ちょっと気持ち悪かった……(笑)。
【橋本】 そんなん言ったら、また『5ちゃんねる』で叩かれますよ(笑)。今の10代の子たちにとってはカップルで動画とか投稿するのが普通なんです。別れて”消したい過去”になったらどうするんやろと心配はしちゃいますけど(笑)。
【中将】 愛の墓標ですね(笑)。まぁこの曲はネタ要素のあるコミックソングだから、若者に受け入れられやすかったんでしょうか。
【中将】 さて、“TikTokで人気の昭和歌謡”と言っても、”昭和だからなんでもウケる”わけじゃなく、実際はアイドル、アニメソング、シティポップなど今でも魅力あるジャンルがそれぞれの支持層にウケている感じだと思っています。中でも、世界的な再評価とリンクしてるなって思うのが、泰葉さんの「フライディ・チャイナタウン」(1981)をはじめとするシティポップ人気です。以前、この番組(ラジオ関西『中将タカノリ・橋本菜津美の昭和卍パラダイス』)でシティポップ特集をしたとき、菜津美ちゃんが「シティポップは”チル”な雰囲気があるから今の若い人にウケる」って言っていたけど、個人的にもまさにその通りなんだと思います。
【橋本】 この曲はTikTokでは踊る系のバズり方じゃなくて、歌う系のバズり方でしたね。最近は男性でも高音域で歌う人が増えているので、泰葉さんのきれいな高音にどこまで近づけるかチャレンジしたいのかな。他のシティポップもサビの高音のロングトーンが決まればかっこいい曲が多いですし。
【中将】 無闇に高音で歌いたがる風潮もどうかと思うんですけどね(笑)。
【橋本】 こらこら、叩かれるって(笑)! まぁ高音はともかく、それ以外にもマネして歌いたくなる要素が多いと思うんですよ。
【中将】 歌詞やサウンド的にもあんまり古びて聴こえないしね。松原みきさんの「真夜中のドア」(1979)も、「フライディ・チャイナタウン」に負けず劣らず流行ってるようですし、大貫妙子さん、吉田美奈子さんも人気ありますね。