今回のテーマは“大阪の歌”。演歌からポップス、ロックまで、大阪を題材にした昭和のヒットソングについて、シンガーソングライター・音楽評論家の中将タカノリと、シンガーソングライター・TikTokerの橋本菜津美が紹介します。
【中将タカノリ(以下「中将」)】 今回のテーマは大阪を題材にした昭和の名曲たち。最近もないことはないですが、昭和には演歌からポップス、ロックまで、はるかに多くの大阪を題材にした曲が発表され、ヒットチャートを席巻しました。
【橋本菜津美(以下「橋本」)】 たしかに最近はそんなに大阪を歌った曲は話題になりませんね。私がリアルタイムで覚えてるのだと、DREAMS COME TRUEの「大阪LOVER」(2007)くらいでしょうか。
【中将】 昭和のほうが大阪という街に存在感があり、関西の芸能界や音楽シーンも「東京なんぼのもんじゃい!」という意気込みがあったのかもしれません。最近はお笑いですら東京のほうが盛り上がってますからね。
というわけで今回は大阪を代表する繁華街、北新地で昭和時代から小料理バー「玉鬘」を営む井上準子ママをゲストにお迎えして、大阪を歌った昭和の名曲たちを紹介していきたいと思います。
【井上準子(以下「準子ママ」)】 よろしくお願いいたします。呼んでいただいてありがとうございます。
【中将】 北新地から長年大阪の人々を見つめてきた準子ママだからこそのお話がたくさんあると思います。どうぞよろしくお願いいたします。
ではさっそく1曲目をご紹介します。都はるみ・宮崎雅(みやざき・ただし)の「ふたりの大阪」(1981)。歌詞にも出てくる通り、北新地、淀屋橋など大阪・キタを舞台にしたデュエットソングです。なんとなく不倫カップルくさいシチュエーションの。
【準子ママ】 私が高校3年の時に出た曲ですね。水商売を始めてからもよくお客さんと一緒に歌いました。資料を見て初めて知りましたけど、この男性パートの方って、都はるみさんのご主人だったんですね。
【中将】 はい、宮崎さんはもともと朝月廣臣(あさづき・ひろおみ)名義で活動していた歌手で、1979年に都はるみさんと結婚しました。ただ、遊び好きな方だったそうで、北新地じゃなくて銀座でクラブ遊びに没頭してホステスさんと浮気。都はるみさんも悩みを担当ディレクターの中村一好さんに相談するうちに不倫関係に。1981年に夫婦でこの曲を歌って大ヒットをおさめましたが、翌年に離婚というトンでもな展開になりました。
【橋本】 ご夫婦それぞれが別のパートナーとこの曲をデュエットしてたりして(笑)。こういう曲を聞くと、昭和の男性ってみんな浮気してたのかなって思っちゃいます……。
【準子ママ】 みんながみんなってわけじゃないけど、昭和の人のほうが欲求にストレートやった気はしますね。
【中将】 今みたいにスマホやGPSもないから、浮気しようと思ったらやりたい放題ですね。
【準子ママ】 浮気もセクハラ、パワハラもやりたい放題やったけど、そのかわりみんな熱くて元気でしたね。頑張って働いて、頑張って欲求を発散する……みたいな(笑)。