大阪に伝わる和菓子文化を当時の絵画やカタログ、菓子型などを通してひもとく展覧会「和菓子、いとおかし ―大阪と菓子のこれまでと今―」が、大阪歴史博物館(大阪市中央区)で開かれている。
江戸時代、観光名所になるほどの人気を誇った大阪・高麗橋の菓子店「虎屋伊織」の流れをくむ「鶴屋八幡」(同区)が特別協力。店に伝わる貴重な資料や同博物館の所蔵品など、初公開品も含む102件が並ぶ。日曜・祝日とお盆の期間には、1階カフェで生菓子の提供もある。
展示は、豊臣秀吉の時代から近代までを4章に分けて構成。鎌倉、室町時代に中国から伝わったようかんやまんじゅう、またポルトガルのカステラなどの影響を受けた菓子は、秀吉も愛した茶の湯文化とともに広がった。お茶の供となる高級な菓子が生まれる一方、庶民の間では、餅やおこし、団子など素朴な菓子が食べられていたという。
虎屋伊織の菓子の中でも、特にまんじゅうは全国的に有名だった。江戸時代の滑稽本『東海道中膝栗毛』の中にも「虎屋饅頭」が登場するほか、同作を店頭で販売する際、本を入れていた袋にも虎屋饅頭の包みが描かれており、当時の人気ぶりがうかがえる。
一方、虎屋伊織は、高級な白砂糖を用いた色とりどりの上菓子作りにも力を入れていた。菓子の商品券「菓子切手」を初めて作ったのも同店で、菓子切手は贈答品としての菓子文化をさらに広げていった。
幕末、虎屋伊織は惜しまれながら閉店したが、同店で修行していた今中伊八が、1863年、同じ高麗橋の地に「鶴屋八幡」を創業した(現在は今橋に移転)。その継承を伝えるのが、鶴屋八幡に伝わる菓子絵図帖「虎製帖(こせいちょう)」。得意先への説明や職人へ意匠を伝承するために使われた菓子カタログで、現代まで受け継がれている。
虎製帖に描かれ、現在も制作されている商品もある。桃色のういろうで餡をくるみ、さらに半透明のくずでういろうを包んだ「夏木立(なつこだち)」もその一つ。今の季節にぴったりな、涼しげで美しい菓子だ。