近畿日本鉄道(大阪市天王寺区)の運賃改定は、 消費税率引き上げに伴う改定を除き1995(平成7)年9月以来、約27年ぶり。2022年4月に、国交省に平均17%増の運賃改定を申請している(通勤定期は18.3%増・通学定期は9.2%増)。
少子高齢化やコロナ禍による収入減のほか、2023~2025年度に総額約860億円に及ぶ設備投資を計画しているのが理由。 老朽化した一般車両の更新や車内防犯対策の強化、可動式ホーム柵設置(利用者が10万人を超える駅から順次整備)などのバリアフリー整備、駅のリニューアルを進める。
初乗り(大人)は現行の160円から180円への値上げとなる。主要区間の例では▼近鉄奈良―大阪難波間が680円(110円増)、▼近鉄奈良―京都間は760円(120円増)になる。
なお特急料金(特別車両料金・個室料金含む)と鋼索線(ケーブルカー)の運賃は据え置く。
近鉄では収束が見出せない新型コロナウイルス感染拡大の中、鉄道利用が大きく減少し、テレワークなどの普及により、経営努力だけで減収分を補てんするのは困難とみている。「新しい生活様式」による鉄道利用の機会の減少がコロナ禍の長期化で定着しつつあり、アフターコロナ期へ移行しても従前には戻らないととらえている。
またJRを除く鉄道会社では日本最長となる501.1キロの営業路線を持つが、沿線人口の減少という現実もある。こうしたなか近鉄は駅運営の合理化や支線の経営改善に取り組んできた。
京阪電気鉄道(大阪市中央区)は、大津線(京津線と石山坂本線の2路線)とケーブルカーを除く、京阪線の運賃に一律10円を上乗せする。京阪線の全60駅をバリアフリー化する費用にあてるため。通勤定期では1か月370円、3か月1050円または1060円、6か月で1990円または2000円程度の値上げ(通学定期は変更なし)。年間15億円の増収を見込む。
大阪メトロ(大阪市西区)も、全路線で鉄道運賃を一律10円引き上げる。これにより、年間約57億円の増収分が見込まれ、駅のバリアフリー化を進める。民営化前の大阪市交通局時代からバリアフリーの充実に積極的だったが、2025年度末までに可動式ホーム柵の設置を、2026年度末までに全駅でホームと電車の段差や隙間の縮小工事、エレベーターなどの整備を進める。
通勤定期の料金は1か月380円、3か月1080円または1090円、6か月で2050円または2060円の値上げとなる(通学定期は変更なし)。
■2段階でバリアフリー化進めるJR西日本
JR西日本(大阪市北区)は、関西圏の東海道線(京都線、神戸線)など「電車特定区間」と山陽新幹線の新大阪―西明石間について、ホーム柵などの駅のバリアフリー化を2022年度から先行して進める。これらの区間は運賃に一律10円を上乗せする。
先行する「電車特定区間」は▼京都―西明石 ▼大阪環状線 ▼JR難波―奈良 ▼天王寺―和歌山などが対象。通勤定期は1か月で300円、3か月で900円、6か月では1800円の値上げに(通学定期は変更なし)。
なお2025年4月からは、「電車特定区間外」の新三田、網干、関西空港、亀岡、松井山手、野洲などまで”10円値上げ区間”の拡大を検討している。