災害大国と呼ばれる日本。阪神・淡路大震災や東日本大震災などの大地震、大型台風やゲリラ豪雨といった極端気象など、近年頻発する自然災害による被害は、深刻さを増しています。それだけでなく、津波、水害、竜巻、火山噴火など多岐にわたる自然災害は、いつ、どこで起きてもおかしくない状況です。
日本では、災害が起きたときのために法律が定められていますが、どのような種類の災害関連の法律が存在しており、どのようなメリットがあるのかを知っている人は少ないのではないでしょうか。今回は、自然災害に対する支援制度について、兵庫県弁護士会・災害復興等支援委員会などで、長年災害の復興支援に取り組んでいる津久井進弁護士に聞きました。
――災害が起こったときに、法律はどのように関わってくるのでしょうか。
【津久井弁護士】災害と弁護士は、あまり関係がないと考えられている方も多いのではないでしょうか。実際に災害が起こったときに法律のことを考える人はまずいません。もちろん、まずは避難など自分の命を守る行動。しかし、災害から数日経って少し落ち着いた頃には必ず法律が絡んできます。
例えば、「被災者生活再建支援法」は、自然災害によって自宅が全壊で住めなくなった場合など、住居の再建に必要な資金を支援し、早急な生活再建に貢献することを目的としています。この被災者生活支援法は、1995年に起こった阪神・淡路大震災を機に制定された制度です。震災によって建物が倒壊したにもかかわらず、当時、義援金以外に支援の手立てがなかったため、生活再建ができない方々を救済するために制度が設けられました。ほかにも「災害対策基本法」や「災害救助法」など、災害時に国民を守ったり、被害を最小限にすることを目的とした法律が存在します。
――津久井弁護士は具体的にどのような活動を行なっているのでしょうか。
【津久井弁護士】自然災害に対する支援制度を広める活動を中心に行なっています。なかでも「災害ケースマネージメント」の普及は特に力を入れています。災害ケースマネジメントとは、被災者一人ひとりに必要な支援を行うため、被災者に寄り添い、個別の被災状況・生活状況などを把握し、それに合わせて様々な支援策を組み合わせた計画を立て、必要に応じ専門的な能力をもつ関係者と連携して支援する「誰一人とりのこさない」災害復興支援です。
また、「被災者支援チェックリスト」や「被災者生活再建ノート」の普及にも力を入れています。実際に災害に遭い、生活が困窮したとき、どうやって支援を受けてよいのかわからないという人が非常に多いです。日本の支援制度は、自分で申請しなければ受けられない制度がたくさんあるため、たとえ支援制度が用意されていても、制度のことを知っていて、申請しなければ被災者は救われません。
そこで、災害で被害を受けた人が利用できる支援制度をまとめた「被災者支援チェックリスト」や、弁護士等の専門家に相談するにあたり、必要な情報を整理しながら、適切なアドバイスを継続して受けやすい「被災者生活再建ノート」を活用していただくことで、スムーズに支援を受けられるようになるのです。