おむすびやのり巻き、つくだ煮など、ふだんなにげなく食べている「のり」。近年、環境変化によってさまざまな影響を受けているという。
「関西の朝の顔」として、テレビなどで活躍する気象予報士・防災士の正木明がパーソナリティーを務めるラジオ番組『正木明の地球にいいこと』(ラジオ関西、月曜午後1時~。アシスタント:荻野恵美子)9月5日放送回では、兵庫のり養殖家かつ森漁業協同組合(兵庫県淡路市久留麻)の代表理事組合長・森吉秀さんをゲストに迎え、くわしい話を聞いた。
のり養殖・生産をかなりシンプルに説明すると、「胞子から芽を育て、摘みとったものを、ふだん食べる“のり”の状態に加工する」こと。
森さんの養殖場では、9月25日頃から陸上に設置した水車でのり網に胞子をつけ、のりの苗をつくる。この工程を採苗(さいびょう)と呼ぶ。10月に入ると採苗した網をいったん引き上げ冷凍保管し、海水温度が23度以下になったところで海に戻す。水中で20〜25日かけて育苗(いくびょう)、5ミリ〜1センチほどになればふたたび網を引き上げ冷凍保管する。
一見、緻密なスケジュール管理のうえ養殖は行われているものの……
「通常だと育苗は10月1日頃実施するのですが、近年では10月25日頃と後倒しになっています」(森さん)
時期に20日以上のずれが生じるようになったのは、温暖化のために海水温が下がらないことが原因だという。
11月下旬〜12月初旬、海水温が18度以下になれば海苔網を海へ戻す。そして、苗から海苔が成長したら摘みとり作業へ入るのである。
われわれの食卓にならぶ「のり」へ加工されはじめるのは12月15日頃。じつに地道な作業を経て養殖・生産されているのだが、森さんいわく、温暖化の影響をフォローするため工程の複雑化は避けられないとのこと。