阪急電車のイメージは?と聞くと、「小豆色」とか「(車両の)中が木の感じ」と答える人が多い。そんな「阪急電車のデザイン」が、2022年度グッドデザイン・ロングライフデザイン賞(主催:公益財団法人日本デザイン振興会)を受賞した。この賞は暮らしの中で人々に愛され、これからも変わらずに存在してほしいというデザインを顕彰しようというもので、1910年の開業以来変わらないマルーンカラーや、ホッとできる車内の木目調の空間などが評価された。
開業以来変わらない。その裏には受け継がれてきた技術者たちの技と想いが詰まっている。車両のメンテナンスを行う大阪府摂津市の阪急電車正雀工場が報道陣に公開された。そこはまさに技術の宝庫だった。
正雀工場では、最新鋭の設備が導入され、阪急電鉄が所有する全ての電車の検査を行なっている。
阪急電車といえば、マルーンカラー。一般的なマルーンは栗(マロン)に由来する茶色だが、少し黒みの強い小豆色やチョコレート色に近い色を「阪急マルーン」として採用している。これは1910年の開業以来変わらない。でも、工場にはこんな色の車両が。
整備の為、工場に来た再塗装前の車両。白い部分は塗装がいたんでいたため、パテが塗られている。凹凸がないようにする、このひと手間が、美しい仕上がりにつながる。
台車部分と車両部分を分離し、車体の検査位を経て塗装の工程へ。車輪がなくてどうやって移動させるのかと言うと……。
35トンクレーンで運ばれる。クレーンゲームのように持ち上げられる姿はまるで空を飛んでるよう。「空飛ぶ電車」と言われることもあるという。屋根があるため空はみえないけど。
塗装は車の洗車機のような機械で、およそ40分かけて行う。
マルーンカラーのイメージが強い阪急電車だが、屋根に近い部分はアイボリーの車両もある。マルーンカラーとアイボリー、どちらを先に塗るかというと……。
アイボリー。面積が狭く、薄色だからなどの理由だそうだ。
塗装を終えた車両はピカピカ。並んでいると違いがわかる。