塗装を終えた車両は、また「空を飛んで」移動。メンテナンスを終えた台車に取り付けられる。ここまで、工場に来てから1週間。試運転を経て、現場に戻る。
塗装は数年に一度だが、洗車は1週間に一度ほどの割合で行われる。
そして阪急電車といえば内装も特徴に挙げられる。初代の車両は木製だった。その後車両の素材は鉄製、アルミと変わったが、木目調の内装は変わらず。
ゴールデンオリーブ色の座席も開業当時から変わらない。シートの素材にはアンゴラ山羊の毛を採用し、肌触りにもこだわった。シートにはバネが入っており、座り心地もふかふかだ。
座席シートは数年ごとにすべてを張り替える。機械ではできず、すべて手作業で行われている。
布地を引っ張り上げながら、生地を吊りマントと呼ばれるピンで止めていく。その数、例えば5人掛けのシートなら100~150本になる。これをひとりで行う。一人前になるまで数年かかるそうで、「最初のうちは少しするだけでヘトヘトだった」と話す人も。
ただ、ピンで留めていくだけではなく、次の張り替えの時が来た時に、生地を取り除きやすいように、ピンの方向も一定にして打ち込んでいく。技とともにそんな思いやりもある。
工場には歴代の車両も保存されており、伝統を重んじる姿勢も感じられる。
歴史を知る車両、見えないところで光る技、最新の技術、そしてここで働く人たちの思い、阪急電車正雀工場は、まさに「宝庫」だった。