モダンで洗練された、多彩なガラス製品を一堂に ルネ・ラリック展 兵庫陶芸美術館 リモート・ミュージアム・トーク | ラジトピ ラジオ関西トピックス

モダンで洗練された、多彩なガラス製品を一堂に ルネ・ラリック展 兵庫陶芸美術館 リモート・ミュージアム・トーク

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花瓶《バッカスの巫女》1927年 オパルセント・ガラスという乳白色のガラスを使用。逆光(右)で見ると夕焼け色に見えるのが特徴。
花瓶《バッカスの巫女》1927年 オパルセント・ガラスという乳白色のガラスを使用。逆光(右)で見ると夕焼け色に見えるのが特徴。
花瓶《バッカスの巫女》1927年
花瓶《バッカスの巫女》1927年

 ここで重要なのは、すべてを機械化したのではなく、鋳型作りや成形後の装飾も含めて、その多くの工程を熟練の職人による手仕事の技を必要としたところです。ゆえに、どの作品もじつにエレガントで、量産品とは思えないような高いクオリティーと崇高な美しさを放っています。

 新しい時代に相応しい、最先端のスタイルをガラスで追求したラリックは、1925年、パリで開催された「現代装飾美術産業美術国際博覧会」(通称:アール・デコ博覧会)に専用のパビリオンを設置し、内外装にガラスを活用した光の空間を演出して、人々を驚かせました。それらは新しいガラスの可能性を示すものとして称賛され、ガラス工芸家としてのラリックは、まさに「アール・デコ」の新時代を切り開く象徴的な存在となっていきました。

立像《噴水の女神、メリト》1924年 アール・デコ博覧会の中央広場に建設された噴水塔《フランスの水源》のために制作された女神像。高さ15mの八角形の塔に、16段128体の女神像が取り付けられています。段ごとにポーズと衣装が異なり、夜間はライトアップされました。
立像《噴水の女神、メリト》1924年 アール・デコ博覧会の中央広場に建設された噴水塔《フランスの水源》のために制作された女神像。高さ15mの八角形の塔に、16段128体の女神像が取り付けられています。段ごとにポーズと衣装が異なり、夜間はライトアップされました。
花瓶《カマルグ》1942年 第二次世界大戦中にコンブ=ラ=ヴィルの工場で制作されました。アルザスにあった第二工場はドイツ軍に接収されていました。南仏に位置する湿地帯カマルグに棲息する野生馬をモティーフとし、フランス国民の勇気と誇りを表現した本作品で、展覧会は締め括られます。
花瓶《カマルグ》1942年 第二次世界大戦中にコンブ=ラ=ヴィルの工場で制作されました。アルザスにあった第二工場はドイツ軍に接収されていました。南仏に位置する湿地帯カマルグに棲息する野生馬をモティーフとし、フランス国民の勇気と誇りを表現した本作品で、展覧会は締め括られます。

 斬新なデザインと高圧力を利用したプレス成形法により力強い立体感を示す花瓶《つむじ風》(1926年)は、まさにアール・デコを代表する作品の一つであり、その技術とデザインは、ラリック晩年の傑作と名高い花瓶《ナディカ》(1930年)にも活かされています。

花瓶《つむじ風》1926年 力強く大胆なデザイン。うねる風の動きを肉厚のレリーフで表現しています。圧搾空気の高圧力を利用したプレス成形技法で制作された、まさにラリックのアール・デコを代表する傑作の一つです。
花瓶《つむじ風》1926年 力強く大胆なデザイン。うねる風の動きを肉厚のレリーフで表現しています。圧搾空気の高圧力を利用したプレス成形技法で制作された、まさにラリックのアール・デコを代表する傑作の一つです。
花瓶《ナディカ》1930年 水の精が互いに体を交差させ、長く伸びた脚が両側に跳ね上がり、くるくるっと巻いて取っ手になっています。デザインも斬新ですが、何といっても、本体と取っ手を同時に鋳型で成形しているという高度な技が目を見張る驚きの作品です。
花瓶《ナディカ》1930年 水の精が互いに体を交差させ、長く伸びた脚が両側に跳ね上がり、くるくるっと巻いて取っ手になっています。デザインも斬新ですが、何といっても、本体と取っ手を同時に鋳型で成形しているという高度な技が目を見張る驚きの作品です。

 その他にも初期の貴重な香水瓶の数々やアクセサリー、照明付きの大型常夜灯やテーブル・センターピース、テーブルウェアからカーマスコットという異色のアイテムまで、あらゆるラリックのガラス作品が一堂に会する貴重な機会となっています。

テーブルコーディネート展示もあります。
テーブルコーディネート展示もあります。

 だんだん秋が深まってまいりました。丹波栗や山の芋など味覚の秋も楽しんでいただけます。丹波篠山の山々に囲まれた兵庫陶芸美術館で、ラリックのガラス作品を通じて、どこまでもエレガントなフランス装飾芸術の粋をゆったりとお楽しみいただき、心豊かなひとときをお過ごしいただければ幸いです。(兵庫陶芸美術館 学芸員・マルテル坂本牧子)

カーマスコット《勝利の女神》1928年 自動車のボンネットに取り付けるラジエーターの蓋の飾り。1920年代から30年代にかけて制作されました。ラリックは何とガラスで作ることを提案し、デザインは30種類にもおよびました。
カーマスコット《勝利の女神》1928年 自動車のボンネットに取り付けるラジエーターの蓋の飾り。1920年代から30年代にかけて制作されました。ラリックは何とガラスで作ることを提案し、デザインは30種類にもおよびました。

◆「北澤美術館所蔵 ルネ・ラリック アール・デコのガラス モダン・エレガンスの美」
会場 兵庫陶芸美術館(兵庫県丹波篠山市今田町上立杭4)
会期 2022年11月27日(日)まで
開館時間 10:00~18:00(入館は閉館時間の30分前まで)
休館 月曜日
観覧料 一般1200円、大学生900円、高校生以下無料
電話 079-597-3961(代表)、FAX 079-597-3967
HP https://www.mcart.jp


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